再出発日記

2006/06/04(日)23:02

監督の暖かい視線「ナイロビの蜂」

洋画(05・06)(66)

監督 : フェルナンド・メイレレス 出演 : レイフ・ファインズ レイチェル・ワイズほか 製薬業界と官僚との癒着、それを批判する団体あるいは個人との戦いは、よく映画で扱われる題材だ。なぜか。「本来人の命を救うものを作っている会社が人々の命を奪う矛盾」、「たった一つの小さな薬を開発できるか出来ないかで莫大な利益が左右されるという現実」が、現代の社会を如実に反映しているからだろう。 私はこの監督の前作「シティ・オブ・ゴッド」を観ていない。南米のスラムを舞台にした暴力と貧困のみのアナーキーな作品だと推測したため、評判が良いのにもかかわらず敬遠したためである。恐らく私の推測は間違っていたのだろう。この映画にも、ケニアの本物のスラム街やそこに住む人々が映し出される。圧倒的な色と音楽。ケニアの「現実」を見事に浮き彫りにさせる映像。その「現実」とソフトフォーカスで撮られた国連職員の「西側の生活」の映像が交互に描かれるのは、とうぜん監督の意識的な編集である。 監督の「現実」を見る目は暖かい。そのことを発見した私は、やがては前作も見なくてはいけないと思っている。 今年のアカデミー賞争いの中では、主演女優賞しかとることはできなかったが、今年のアカデミー賞はてはカンヌ映画賞の特徴である「現代社会の流れに対するプロテクト」の重要な一作品になることは間違いない。 夫が最後にとった行動には意表を衝かれた。私はこの時に至ってやっと、この映画が「恋愛映画」として宣伝されている意味を知った。

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