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2006年07月21日
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テーマ:本日の1冊(3573)
前回の続きです

当時ベトナム戦争(1960年 - 1975年)が起きていた。竹内が、米中関係が「緊迫している」といった理由はここにあった。「この局地戦争は、実はアメリカの対中国戦争の一部であり、その前哨戦なのだ。そしてこの戦争では、日本の自衛隊は、直接出兵すると否とにかかわらず、共同作戦の一翼を担っている。」
そうだった。すっかり忘れていた。もし圧倒的な物量を持つアメリカが、ベトナムのゲリラ戦略に負けていなかったとしたら、アメリカが勝っていたらどうなっていただろう。(竹内も「前哨戦」といってベトナムの勝ちは予測していなかったようだ)次は米中戦争が始まっていた可能性は十分にあったのかもしれない。

「しかしわれわれ日本国民は、どうあろうとその対立に巻き込まれるいわれはないし、巻き込まれてはならない。それは「政府の行為によって再び戦争の戦禍が起こることのないように決意」した「主権者たる国民」のとるべき道ではない。」

44年前に戻って「未来」を見ると、いろんな未来が見えてくるだろう。
当時は連年の不作による中国経済の困難さが報道されていた。中国はまるで現在の北朝鮮のように見られていたのである。(もちろん程度の差はある)しかし竹内は「UPI記者と違って中国の内部崩壊を予想しない。」このあたりは中国専門家としての竹内の見通しの確かさがある。中国はみごとに経済を立て直したのは44年後の今だからこそ言えるのだろう。中国革命史に習って、ベトナムのゲリラ作戦も正確に評価していた。「一方アメリカ内部の戦争抑止力も、そう見捨てたものではあるまい。よほどのことがなければ、無謀な軍事投機には踏み切るまい。」この見通しは甘かった。アメリカは65年に北爆を開始する。「したがって私は、米中戦争が起こるとは考えない。しかし、起こらぬという保証もないわけだ。偶発核戦争と同じく、米中戦争も、可能性としてはありうる。」
このことはまるで、北朝鮮のミサイルが、偶発的に日本の国土にしかも原発に落ちることと同じであるように思える。そして、竹内好は以上の認識を示した上で、「だから自衛隊を合憲にして、軍備増強せよ」とは言わなかった。

「われわれ日本国民は、全力をあげてこの戦争を阻止するべきである。それが最大の平和への貢献である。したがってまた、憲法を生かす道である。」「それにはどうすべきか。中国との国交回復を目標とし、その実現に向かって全力をかたむけるべきである。」「国際緊張は相互的であり、不安と恐怖の連鎖反応によって進行する。戦後の米中関係がそうであり、日中関係もまたそうである。」「不安と恐怖は、避けられぬものではあるが、除くべく努力しなければならない。それが「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」することであり、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」のもそのためである。アメリカだけを「信頼」して中国を「無視」してはならない。安保体制を弱めることは、一時的にはアメリカの利益および使命感に不利を与えようが、究極的にはアメリカの利益にもなる。一方、中国の不安と恐怖はそれによって相当緩和される。しかも、そのためにアメリカが武力に訴えることはまずない。これに反して、安保体制を強化する方向は、緊張を激化させて、それだけ戦争の危険を濃くする。」

歴史は44年間の間、皮肉な進路をたどった。中国との国交回復は成った。しかし、それは日本国民の努力の賜物ではない。予想に反してベトナム人民は勝利する。アメリカは米中接近を図り、その直後に日中国交回復がなるのである。
「極東の局面で最大の平和の保障である日中の国交回復が、なぜできないか。理由はいろいろ考えられる。しかし、根本はなんといっても、それが力のバランスを崩すという恐怖があるからだろう。」「確かに、日本が少しでも中立または非同盟の方向に傾くことは、現状の変更になる。アメリカは喜ばないかもしれない。しかし、現在の臨戦態勢に等しい緊張を解く方法がほかにあるだろうか。」「問題は、これが飽くまで日本の国民的利益の立場で選択されたものであることを自他に納得させる配慮が肝心なことである。それさえ守れば、無用の摩擦は避けられること、一昨年のいわゆる安保反対闘争の例に微してもあきらかである。」
そうだった。国民的な運動がいかに大きな力を持つかは、安保闘争が証明していた。この運動で批准を阻止することはできなかったけど、それ以降約20数年にわたり、新ガイドラインまで、アメリカから軍備増強のあからさまな要求を阻止させてきたのである。

以下長いが結びの言葉まで一挙に紹介する。
竹内好の文章を読んで私は幾つかのことを思った。この44年間、世界の枠組みは変わった。けれども、日本の「平和と自衛」に関する問題は驚くほど変わっていない。経済問題を置いといて、アジアとどのように付き合っていくか、それが日本の問題に関しては「核心」なのだろう。以下最後のセンテンスの「中国」は「北朝鮮」に。「朝鮮」は「北東アジア同盟」に、切り替えることを私は提案したい。少し大雑把過ぎるが、そのような大雑把な眼で世界を見ることのほうが今は大切だと思う。でも竹内好と同じく、「目標」は明快で単純だ。
「これ(日中国交回復)によって自衛と平和がイコールで結ばれ、憲法9条は実質的に生かされる。
これは大事業であるから、政党に頼っているだけでは実現はおぼつかない。国民的な奮起がなくてはならない。
憲法は「主権が国民に存していることを宣言し」ているが、これは選挙の日だけ国民が主権者だという意味ではないだろう。「国政は国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来」するから、最終の政策決定権は国民にあると解するべきだろう。
国民が決意すれば、中国との国交回復は出来る。
それでは国民とは何か。
国民の形成的要件は法律で決まっているが、これは実質とは関係ない。国民の国民たるゆえんは、主権者たる自覚にあると私は思う。したがって国民は、一回的に形成されるのではなく、反復して再形成されるべきものだと思う。
そのような国民は、憲法解釈においても最終決定権を持つ。私の信じる国民の憲法9条の解釈はこうであるー中国との国交回復を急げ。朝鮮の平和統一を援助せよ。台湾の処理は中国国民の自治にゆだねよ。そして国内からは軍事基地をなるべく速やかに除け ! 」









最終更新日  2006年07月21日 22時21分17秒
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Re:竹内好「自衛と平和」問題の核心とは何か(後編)(07/21)   Looper さん
いやー、凄く先見の明のある方がいらっしゃったんですね。私は、今の中国の変化を見て、北朝鮮もそういう方向に向かわせることに平和的解決の糸口があるんじゃないかという持論を某所で述べましたが、そういった事例がない時代から、そこまで見通せるのは凄いとしか言いようがありません。

とても参考になりました。
ご紹介ありがとうございました。
(2006年07月22日 21時31分01秒)

Re[1]:竹内好「自衛と平和」問題の核心とは何か(後編)(07/21)   KUMA0504 さん
Looperさん
私の拙い文章の意を汲んでいただきありがとうございました。返事を書き出すと長くなったので、エントリーを立てました。「次へ」進んでもらえたら、と思います。 (2006年07月23日 12時54分10秒)

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