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カテゴリ:邦画(05・06)
黒木和夫監督の遺作ということで正直過度の期待はしないようにしていた。今までいくつか病死直前の作品を見ていて(今村昌平、深作欣二、黒澤明)さすがに気力の衰えを感じざるえなかったからである。ところが全ての画面の隅々まで想いの行き届いた素晴らしい作品になっていた。
敗戦の色濃い昭和20年・春。両親を失ったばかりの娘・紙屋悦子は、鹿児島の田舎町で優しい兄。安忠、その妻・ふさと肩を寄せ合う慎ましい毎日をおくっている。 彼女は密かに明石少尉に想いを寄せる。ところがある日、兄は別の男性との見合いを悦子に勧めてきた。それも相手は明石の親友・永与少尉で、明石自身も縁談成立を望んでいるらしいーー 急展開の恋愛や生死をわけたドラマがあるわけではない。食事のシーンが多く、三人しか観客はいなかったが、始終笑いが出ていた。生活喜劇だと見に行っても間違いではない。ところがその日常生活の合間からふと戦時の悲しみが浮かび上がる。思うに、監督の気力が充実していなければ作り得ない作品である。 おだやかなラストをみて、「美しい夏キリシマ」から次第と監督のトラウマも癒されてきたのかなと、感じた。ただ、これが最後なのは何とも惜しい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年10月03日 23時57分01秒
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