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2006年12月21日
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テーマ:本日の1冊(3114)
私の長くない人生の中で、友達とつるんでいたという状況の中で、時と場所と人がすべて違っていたのに、同じ言葉を、おそらく三度ほど聞いたことがある。その言葉とは次のような、仲間に同意を促す台詞である。

「それにしてもなあ、俺たちほど個性的な人間が、こんなにひとつ処に集まるなんてめずらしいよなあ。」

バカか、お前は。と、私はそのたびごとに心の中で思った。ちょっと変わった趣味があるぐらいで、秘密の企てをしているぐらいで、中学生のときは四人の性格が単に違っているに過ぎなかったぐらいで、「めずらしい」もくそも無いもんだ、と。その時やはり自分は自覚していなかったのだと思う。自分では否定していたが、自分だけはこのような「ひと山いくら」のサルの群れの中には入らない、と自惚れていたのだ。



小説は四人の少女と、一人の少年の独白形式で話が進む。少年は母親を殺して逃走した。少女たちは興味半分に少年の逃走を助けてしまう。ケータイで結ばれる彼女たち。自分だけは、「特別な自分」を見事に「友達」の少女たちに隠しとおせると思っている彼女たち。その一方で、「本当の自分」を分かってくれる「誰か」を探している。桐野作品だから当然のように物語は悲劇に向って進んでいく。

いまどきの若者の覗き見はそれなりにスリルがあって楽しい。でも「柔らかな頬」(上)(下)「OUT」や「玉蘭」のように、私の心は引き裂かれない。若者たちの悩みはすでに私からはあまりにも遠いところにある。けれども、自分だけは人より特別だ、自分のことだけを誰か知っておいて欲しい、という欲望だけは今も健在だ。この高校生たちはバカだ、と笑いきれないのもそこら辺りにある。

高校生を持つ親なら、この五人の独白小説を読んで背筋が寒くなるだろうと思う。






最終更新日  2006年12月21日 12時49分46秒
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