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テーマ:映画館で観た映画(8350)
カテゴリ:洋画(05・06)
はっと気がつくとこの映画の感想はアップしていないことに気がついた。
「カポーティ」 作家は、どんなエンターテイメントを書こうとも、どんなノンフィクションを書こうとも、本質的にいつも「自分」を書いているのである。そのことを描いた作品である。 カポーティはネイティヴでスラム出身である殺人者のなかに自分を見る。白人で上流階級にいるカポーティであるが、不幸な家族環境にいたという出自と、虚妄で固められた自分の言動を一番嫌っていたのは、彼自身であったからである。だから誰よりもその殺人者を愛し、誰よりも極刑に晒されることを望んでいた。この映画の最後に死刑描写がある。フィリップ・シーモア・ホフマンの渾身の演技を見よ。カポーティがその後廃人のように過ごしたことも十分に納得できる描写だ。私はこの映画でカポーティの目を通して死刑を追体験した。死刑制度の是非は論じていない。けれども、死刑は一人の作家の人生を奪ったのである。 少し、脱線します。 不安倍増内閣は法律遵守を進めることが世の中の進歩につながると考えているらしい。だから何の迷いもなく、いやあえて進んで、クリスマスの日四人の死刑囚に死刑を断行した。路上駐車は法律通り五分以上置けば自動的に罰するだろうし、飲酒運転は法律通り取り締まり、犯罪者は広く世間にお知らせするだろう。チラシを撒きに集合住宅に入り、住民から通報があれば、法律通り勾留するだろうし、公安を総動員してでも犯罪者に仕立て上げるだろう。売春みたいな由々しき犯罪に対しては、通報すれば、賞金をあげる制度を作るだろう。 ここでは死刑制度自体の是非はあえて語らない。話がややこしくなるからである。 路上駐車や飲酒運転やチラシ撒きや売春を罰することの是非についても語らない。 私が不安倍増なのは、こういう厳罰主義がどういう社会をもたらすか、ということなのだ。 斉藤貴男は「安心のファシズム」(岩波新書)のなかで「割れ窓理論」について語っている。軽微な犯罪の予兆段階でも容赦しない。警察権力の徹底した取締り。確かにニューヨークではそれで犯罪件数は減ったのかもしれない。しかし、大事な事はその犯罪の原因を探り、その原因の除去に努める事だろう。根本から間違ってはいないか。 映画を見ていると、カポーティが疎外された原因は、或いはネイティブの殺人者が生まれた背景には、白人の保守的な考えにあるのではないか、とさえ思ってくる。つまり、キリスト原理主義による「神と悪魔の対決する社会」である。そこではじめてこの映画はブッシュに追随する不安倍増内閣と結びつくということになるだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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は~い、よく分かります。
人間どこかで息抜きしなければ。 その穴を安べ~売国戦争遂行内閣はご丁寧に、一つ一つ潰しています。 その結果として支持率50%割れなんですけど。 その重大な兆候に 自公の誰も気がつかない。 やはり、安倍は靖国神社の神主が分相応かも。 (2006年12月26日 22時54分48秒)
まさに不安倍増内閣ですよね。
(2006年12月27日 20時05分45秒)
hiryu4398さん
>は~い、よく分かります。 >人間どこかで息抜きしなければ。 >その穴を安べ~売国戦争遂行内閣はご丁寧に、一つ一つ潰しています。 >その結果として支持率50%割れなんですけど。 >その重大な兆候に >自公の誰も気がつかない。 >やはり、安倍は靖国神社の神主が分相応かも。 ----- これがだんだんと30%までいけば、国民は『気が付いている』ということになるんだけど、そうなのかななあ、という気もします。 (2006年12月27日 20時22分34秒)
N.カナエさん
>まさに不安倍増内閣ですよね。 ----- 今日、思いついたんですけど、予算編成は庶民に厳しく大企業に甘い、「アベコベ内閣」っていうのはどうでしょう? (2006年12月27日 20時24分08秒)
突然で申しわけありません。現在2006年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。投票に御参加いただくようよろしくお願いいたします。なお、日本インターネット映画大賞のURLはhttp://www.mirai.ne.jp/~abc/movieawards/kontents/index.htmlです。
(2006年12月28日 14時28分12秒)
日本インターネット映画大賞さん
おっと、そういう季節なんですね。忘れていました。また冬休みの宿題として作っていかなければ。 (2006年12月28日 18時10分15秒)
しっかりと追求できていたとは思いませんが、思いテーマの作品でした。
色々意見があるでしょうが、個人的には死刑制度には問題があると思っています。 厳罰主義は効果があることと無い事があると思います。 死刑の対象になるような凶悪犯罪を起こす人間には、むしろ何の効果も無いような気がしますが。 http://noraneko22.blog29.fc2.com/ (2006年12月29日 18時26分40秒)
ノラネコさん
>色々意見があるでしょうが、個人的には死刑制度には問題があると思っています。 私も問題があると思います。 けれどもまだ理路整然と根拠が言えない自分がいます。 >厳罰主義は効果があることと無い事があると思います。 >死刑の対象になるような凶悪犯罪を起こす人間には、むしろ何の効果も無いような気がしますが。 >http://noraneko22.blog29.fc2.com/ ----- 私も効果を言えばある場合もあると思います。 危険なのは、良識のある人でも「確かに必要だ」「正しい」といわざるを得ない雰囲気を作った上で少しずつ、夜警国家が始まるのではないか、という不安です。 (2006年12月30日 02時53分17秒) |
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