再出発日記

2006/12/28(木)17:49

「硫黄島からの手紙」名監督からの作品

洋画(05・06)(66)

監督 : クリント・イーストウッド 出演 : 渡辺謙 、 二宮和也 、 伊原剛志 、 加瀬亮 、 中村獅童 戦争に現れる多くの悲劇を描き出して見事な映画である。日本人が見てまるきり違和感が無い。まるで日本人が作ったかのような日本の軍隊の実態、自然なせりふ。ところが今までの日本人監督はこのような軍隊の実際を映画にしてきただろうか。「野火」「真空地帯」などをまだ見たことが無い私には「してきていない」と断じることが出来ない。ただ、日本映画界は、この数十年間ついにはこういう映画を成立させることが出来なかった現実をきちんと考えなくてはならない。それは日本の問題である。 アメリカにとっては違う。第一部は、戦場の場面と、アメリカのプロパガンダという二つの舞台をしつらえることで、現代アメリカ本土の問題をあぶりだし、この映画ではまっすぐイラク戦争で死んでいったイラクの人々のことを念頭に入れているのだろう。イーストウッドは見事な反戦映画を作った。映像は硫黄島の土の色を基調に映される。単色かと思うと時々現れる鮮烈な血の色により、ああこの色は戦争体験者の心像風景なのだな、と納得するのである。我々が体験するのはたった二時間であるけれども、実際のそこに居た人は何ヶ月もこういう世界で地獄を見るのであろう。 実はイーストウッドの映画を観るようになったのは「ミスティックリバー」から。この作品に関しては、最後の場面がどうしても納得いかなくて、彼の力量を勘違いしていたままだった。驚愕したのは「ミリオンダラーベイビー」によって。個人の誇りと人との関わり、罪と罰と許しの関係、生きるということと死ぬということを、数少ないせりふと重厚な演技と、同時にエンターテイメント性を持った映像で見せ付けられて、脱帽した。 実はそれらのテーマや、映画の作り方は「父親たちの星条旗」にも現れるし、この「硫黄島からの手紙」でも濃厚に現れる。そして、どの作品でもそうなのだが、決して涙腺を刺激させない淡々としたつくり方をしているのである。これはなかなか出来ることではない。 正に名監督の道を一歩一歩確実に歩んでいる。その映画を本国よりも早く観る事の出来た栄光を我々は知っておくべきなのかもしれない。

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