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カテゴリ:07読書(フィクション)
「影踏み」横山秀夫 祥伝社文庫 横山秀夫にしては「異色」といっていい点が二つある。 主人公は警官でもなければ、新聞記者でもない。「ノビ師」と呼ばれる人の睡眠中を狙ってはいる泥棒である。よっぽどの度胸と技術、頭が必要とされる。 もう一点は彼の頭の中には、家事で焼け死んだ弟が人格のみ棲みついていて、主人公と弟の会話でこの短編集が成り立っているのである。一種の二重人格であるが、弟は決して表面には出てこないので、それを知っているものは主人公以外は誰もいないし、物語の途中でそのことに気がつく人は誰もいない。ホームズの主人公に対して、弟がワトソンの役割を引き受けている。 一方、弟と弟を火事心中の道連れにした母親を追い詰めたのは自分ではないかと思っている兄は、エリートの道を踏み外し、泥棒になる。けれども、頭はいいから、こだわりの事件は解決するわけだ。「兄弟愛」という言葉はおこがましいから使わない。 このような趣向で、しかも一遍一遍が謎解きミステリになっている、のだから凄い。エンタメの王道を行く短篇連作である。 produced by 「13日の水曜日」碧猫さん お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年06月01日 22時09分14秒
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