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2007年07月30日
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「君たちはどう生きるか」(岩波文庫 吉野源三郎)この固い題名から小難しい理屈を並べた哲学書の類を想像してこの本を敬遠していた人がいるとしたら、その人は不幸である。こんなに面白い本はめったにあるものではない。少年が読んでも発見だらけの本であるが、大人が読んでも足元がすくわれるように、あなたを打ち負かすだろう。

この本は山本有三編による「日本少年国民文庫」(1935~37)全16巻の最後の配本だった。「当時軍国主義の勃興とともに、すでに言論や出版の自由は著しく制限され、労働運動や社会主義運動は、凶暴といっていいほどの激しい弾圧を受けていました。山本先生のような自由主義の立場におられた作家でも、1935年には、もう自由な執筆が困難になっておられました。その中で先生は、少年少女に訴える余地はまだ残っているし、せめてこの人々だけは、時勢の悪い影響から守りたい、と思い立たれました。先生の考えでは、今日の少年少女こそ次の時代を背負う大切な人たちである。この人々にこそ、まだ希望はある。だから、この人々には、偏狭な国粋主義や反動的な思想を越えた、自由で豊かな文化のあることを、何とかして伝えておかなければならないし、人類の進歩についての信念を今のうちに養っておかねばならない、と言うのでした。」と吉野源三郎は戦後版の作品解説に書いている。

今の15歳が憲法国民投票の最初の世代になるということを考えると、山本有三先生の言はまるで現代の我々に諭しているかの如くである。

当初はこの最終配本は山本有三が書く予定であったが、病気のためにそれが出来なくなり、編集者の吉野が責任を取る形で執筆をすることになったという。仕事の傍ら約半年をかけて書き上げたのが本書である。現代中学生にもわかるような平易な現代文。少年たちがすんなりと入ってこれるように、世界の見方(認識論)の一番根本的なところを少年の発見そして成長物語として描く。

社会はどのように繋がっているのか。
科学的な見方とは何か。
貧困の問題。
英雄とは何か。
勇気とは何か。
主体的に生きるとは何か。
歴史と国と文化の関係。

この本が岩波文庫に入ったのは1982年。吉野さんの死の直後です。解説として丸山真男の一文が載っていて、(これがまた、丸山研究の上でも重要な一文)貧乏問題については「現代では実感することが困難です」と書いている。しかし、2007年の今日、豆腐屋の浦川君よりもまだ一段と貧しく惨めな「階級」が存在し始めているというのは、なんという歴史的な皮肉だろうか。現代は回りまわって新たにこの本が必要とされている時代になりつつある。

子供だけではない。大人もところどころ大きな問題を突きつけられます。特に第7章「石段の思い出」でのお母さんの思い出話は、鋭く私の内省を迫ります。

叔父さんはあとで覚書ノートに書くのです。
「人間が本来、人間同志調和して生きてゆくべきものでないならば、どうして人間は自分たちの不調和を苦しいと感じることが出来よう。お互い愛し合い、お互いに好意をつくしあって生きてゆくべきものなのに、憎みあったり、敵対しあったりしなければいられないから、人間はそのことを不幸と感じ、そのために苦しむのだ。
また、人間である以上、誰だって自分の才能を伸ばし、その才能に応じて働いてゆけるのが本当なのに、そうでない場合があるから、人間はそれを苦しいと感じ、やりきれなく思うのだ。」
「僕たちは、自分で自分を決定する力を持っている。
だから誤りを犯すこともある。
しかしー
僕たちは、自分で自分を決定する力を持っている。
だから、誤りから立ち直ることも出来るのだ。」


本当は今一度、新しい吉野源三郎が、新しい「君たちはどう生きるか」を書くことが求められている時代です。それは難しい仕事です。吉野さんを越える内容が書けるか、ということも然ることながら、情報があふれている現在、単なる少年ものの書籍として出版しても埋没してしまう恐れがあります。けれども、この内容はアニメとかではなかなか伝えきれないものです。「隣のとっとちゃん」みたいな大ベストセラーになれば、少年少女も知るのではないかとは思うのですが。

<余禄>
次は「アリランの歌」についての読書感想文を書こうと思ったのですが、小田実さんのお亡くなりになった今、もう少し背景のことを知りたくなったので、もう少し後にします。(講談社新書「日中戦争」買いました)次回はたまりにたまった映画評。






最終更新日  2007年07月30日 23時19分38秒
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