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カテゴリ:邦画(07)
生エリカを見たことがある。一作目の「バッチギ」が公開された直後。『問題のない私たち』(監督・脚本森岡利行 黒川芽以 沢尻エリカ 美波)の舞台挨拶で岡山に来たのである。まさにブレイクする直前だった。その半年後なら、岡山の場末の映画館には到底来なかっただろう。彼女はここで清純な役とは180度変わり、最初転校生でいじめられるが、すぐに反撃し、したたかないじめをする高校生の役になる。
現在のエリカはまさにこの映画を地でいっているみたいだ。ちょっと前々までちやほやされていたのに、一夜明けると、いじめの対象になっている。確かに彼女は「人間として未熟」だったのかもしれないが、その状態を面白おかしく報道するテレビや、ここぞとばかりにサイトに殺到して炎上させる視聴者たち、「社会として未熟」な様がよく表れている。 生エリカを見たとき、舞台挨拶では、わりと奇抜な服装で出てきた覚えがある。映画に出る前はモデルをしていたというので納得。当時19歳と言う年のわりには、非常にしっかりした受け答えで、その年はすでに二本の映画出演が決まっていたにもかかわらず、「夢は女優ではない」と言い切った。モデルの仕事、歌の仕事、そして女優の仕事もしたいといっていた。すでに自分の将来を見据えて仕事をしている。みかけはまるでお人形みたいに綺麗だけど、「これは化けるな‥‥‥」と思った。その後の展開はご存知の通り。化ける、どころではない。この二年の間に主演ドラマ二本。脇役映画三本。主役映画、四本?。歌でもヒットを飛ばし、エリカ100変化のモデルDVDさえも出る。この活躍は、「異常」以外の何者でもない。 彼女は夢を果たしつつある、といっていい。おそらく本当の夢は世界のトップモデルになることなのかもしれない。彼女にとって、映画はそのことを実現する手段なのだ。‥‥‥とでも芸能事務所から説得され、この殺人的スケジュールをこなしてきたのかもしれない。 エリカがこの映画の完成披露試写会で、ブーたれていたということで、大バッシングが起こったらしい。インターネットで拾うと、そのことに対して、エリカは謝罪コメントを出し、涙ぐみさえして、それがまた芸能インターネット記事のトップに載る。私は、確かにプロの女優としてはやってはいけない態度だったとは思うが、別に話題にするべき様なことではない、と思う。このようなことになる前に、芸能事務所がエリカとじっくり話し合い、しっかり休養を与えるべきだったと思う。事務所の責任である。彼女は夢の実現のために相当無理をしてきたのだろうと思う。資本の論理はかのようにして「人間」を「儲けの道具」として扱ってしまう。 さて、映画だ。作品としては、退屈もせずに見ることが出来た。 監督 : 行定勲 原作 : 雫井脩介 主題歌 : YUI 出演 : 沢尻エリカ 、 伊勢谷友介 、 竹内結子 、 板谷由夏 、 田中哲司 、 サエコ 、 黄川田将也 、 永作博美 、 石橋蓮司 、 篠井英介 、 中村嘉葎雄 展開は最初からほぼ読めてしまう。サプライズはない。行定監督らしく、最初からなめるように撮る映像技術は健在。上空の桜散る映像から子猫の昼寝する城下町の古い下宿に映像を移していく。全体として三浦の町が非常に上手いこと撮れていた。 ストーリー的には、竹内結子の想いが紙ヒコーキと共に全編を覆うのであるが、しかし主役はやはり沢尻エリカであるという構造になっている。沢尻エリカには「花」がある。何をしなくても漂う「色気」はほかの同年齢の女優にはないものである。そしてもうひとつは「気の強さ」である。映画ではそんなエリカの特徴を上手いこと掬い取っていた。エリカもきちんとそれに応えていたと思う。 タダ、エリカがもし女優としてきちんと評価されるとしたならば、もう一皮剥ける必要がある。それはライバルといわれる長澤まさみにも言えることなのだが、「はっと映像に釘付けにさせる」演技なりセリフなりが、まだ彼女たちにはないのである。一つのセリフの持つ深みがまだ彼女たちにはない。沢尻エリカは聡明だから、そのことに自分でも気がついていて、いらだっていたという節もある。一年間に何本も主演映画を撮るようなスケジュールではとうていそのような映像を取ることは無理だろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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誰もが機嫌良く元気、笑顔で嘘くさいいい人を演じているより、面白いと思ったんですが、世間はこぞって叩きましたね。(テレビで何度もすごいブータレぶりを流されたし)エリカちゃんの起死回生には、ものすごい社会派に出演するのがイメージチェンジでいいかもしれませんね。
(2007年10月06日 07時22分09秒)
薔薇豪城さん
> 誰もが機嫌良く元気、笑顔で嘘くさいいい人を演じているより、面白いと思ったんですが、世間はこぞって叩きましたね。(テレビで何度もすごいブータレぶりを流されたし)エリカちゃんの起死回生には、ものすごい社会派に出演するのがイメージチェンジでいいかもしれませんね。 ----- 「パッチギlove&peace」を観たとき、これはまさしく沢尻エリカのために書かれた脚本だと思いました。だから、ラブシーンがあるからといって断らないで欲しかった。彼女がラブシーンも体当たり演技して、ある程度汚れ役もやった後に、あのラストシーンを説得力を持って演じることが出来たなら、まさに彼女の代表作になったであろうに、本当に残念です。 (2007年10月06日 07時48分48秒)
KUMAさんに同感です。「炎上」とか、持ち上げて叩くのが好きな下品な行動にはもう踊らされたくないでしょう。
「パッチギ」はメチャ可愛くて続編に出なかったのは残念でした。 (2007年10月06日 09時12分21秒)
叩かれていますが、彼女の映画での存在感はすごいと思います。彼女が出演することで、何倍も魅力的になった作品は多いのではないでしょうか。すごい女優だなあと思います。
まだ21歳・・・仕事をしているとはいえ、大学生の年齢なら時にはしくじりのあります。いただけない態度だったと思いますが、必ず復活すると思っていますし、期待しています。 (2007年10月06日 10時35分43秒)
ribon5235さん
>KUMAさんに同感です。「炎上」とか、持ち上げて叩くのが好きな下品な行動にはもう踊らされたくないでしょう。 > >「パッチギ」はメチャ可愛くて続編に出なかったのは残念でした。 ----- 最近の「炎上」話題は、朝日のコラムニストが「アベする」というのを流行語だと紹介したことに対する、それは捏造だということでコラムニストのブログが炎上した、と言うのがあります。流行語だといったのは、大げさだったと思いますが、なかなかよく出来た造語なので、私は流行らせばいいと思うのですが‥‥‥。 「『アタシ、もうアベしちゃおうかな』という言葉があちこちで聞こえる。仕事も責任も放り投げてしまいたい心情の吐露だ。そんな大人げない流行語を首相が作ってしまったのがカナシイ」 (2007年10月07日 05時40分35秒)
のりまきターボさん
>叩かれていますが、彼女の映画での存在感はすごいと思います。彼女が出演することで、何倍も魅力的になった作品は多いのではないでしょうか。すごい女優だなあと思います。 >まだ21歳・・・仕事をしているとはいえ、大学生の年齢なら時にはしくじりのあります。いただけない態度だったと思いますが、必ず復活すると思っていますし、期待しています。 ----- 彼女は世阿弥「花伝書」に言う「若い頃特有の花を持っている時期」の魅力を持っているのだろうと思います。年をとっても「花」を維持できるか、今が最初の試練ですね。 (2007年10月07日 05時45分42秒)
篠井さんは歌舞伎好きで花組芝居からフリーに。テレビでは特異な脇役をしますが舞台では現代女形、ヴィヴィアン・リーや杉村春子が演じ、玉三郎がまだ出来ない「欲望という名の電車」を既に演じてます。失礼しました。
(2007年10月07日 09時44分18秒)
KUMA0504さん
>ribon5235さん >>KUMAさんに同感です。「炎上」とか、持ち上げて叩くのが好きな下品な行動にはもう踊らされたくないでしょう。 >> >>「パッチギ」はメチャ可愛くて続編に出なかったのは残念でした。 >----- >最近の「炎上」話題は、朝日のコラムニストが「アベする」というのを流行語だと紹介したことに対する、それは捏造だということでコラムニストのブログが炎上した、と言うのがあります。流行語だといったのは、大げさだったと思いますが、なかなかよく出来た造語なので、私は流行らせばいいと思うのですが‥‥‥。 >「『アタシ、もうアベしちゃおうかな』という言葉があちこちで聞こえる。仕事も責任も放り投げてしまいたい心情の吐露だ。そんな大人げない流行語を首相が作ってしまったのがカナシイ」 ----- どうして「アベ」で炎上するのか、私には理解不能です。その通り無責任なアベです。 (2007年10月07日 09時45分49秒)
ribon5235さん
>どうして「アベ」で炎上するのか、私には理解不能です。その通り無責任なアベです。 ----- 彼らのいうには、「アベする」という言葉はべつにその時点ではぜんぜん流行ってはいなかった。朝日の捏造である、というのです。少しはほかの雑誌で扱われたことがあったようなので、「造語」ではないようですが、つまらないことで炎上するものです。本質をついた言葉だから、私は流行ればいいと思うのですが。 (2007年10月07日 20時04分46秒)
わたしも彼女はとても面白い子だなと思いました。でも、最後には号泣して謝罪しましたね。やはり、そうでもしないと、日本社会には許してもらえないのでしょうね。周りがもっと広い心で見てあげればいいのに、と思うのですけれどもね。これで、彼女が人間不信になったり、うつになったりしなければいいのですが。いじめに負けずに、たくましく行ってほしいです。
(2007年10月07日 20時24分29秒)
永遠のホホエミさん
今回記事を書いてみて、「女優」としてよりも、「表現者」をずっと目指してきたし、そのことは一本筋が通って一貫していることに気がつきました。若いのにあそこまで確りしている人はあまりいません。ポキッと折れないというのは、絶対いえない、と最近は「うつ」に関しては思うようにはなりましたが、けれどももし折れたなら、確実に芸能事務所の責任です。 (2007年10月08日 15時55分49秒) |
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