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カテゴリ:07読書(ノンフィクション)
いま「悪夢のサイクル」(内橋克人)という本を読んでいます。
悪夢のサイクル 品川正治氏が経済を含めた憲法を生かす「必要性」を訴えたのだとしたら、内橋克人氏は現役の経済人として、憲法を活かす「もう一つの道」を選ばなかったらどのような日本になるのか、経済の視点で、しかもわかりやすく示していると思う。氏は、30年スパンで世の中を見ないといけないという。日本は格差社会になった。それはこの15年間で劇的に変化した。その詳しい内容はここでは述べない。内橋氏はそのような社会が生まれた原因を世界史的な観点でとらえなおす。 そうすると、アメリカ、南米などで起こったことを見ていくうちに氏は「新自由主義循環」あるいは「市場原理主義の循環運動」があることに気がつく。(新潟大学の佐野誠教授が「ネオリベラズム・サイクル」と名付ける)それがいま日本に向かってやってきているのである。内橋氏は95年の段階で、明確に現代の日本を見通していました。なぜならそれはすでに世界で起きていたことだったから。 変化はまずアメリカでおこる。 70年代の末からアメリカでおこった政策の変更は大きく分けて三つ。 一、それまで規制下にあった産業を自由化する。 二、累進課税をやめる。 三、貿易の自由化。 要は、「これまで公平なアンパイアのいたゲームからアンパイアをのけてしまうということだったのです。ゲームは混乱し、なんでもありの世界になりました。」ということになり、「1959年には、アメリカの上位所得者トップ4%の総収入は、下位所得者の下から35%の総収入と同じでした。ところが、規制緩和後の91年には、トップ4%の総収入は、下から51%の総収入と等しくなってまった」だそうだ。多くの人のそのルール変更には無自覚だった。「結局、そうした人々はゲームからはじき出され、得をしたのは、権力の中枢にいてルールブックが変わることをよく自覚していた一握りの人々でした。」「規制緩和によって最初に見えてくる問題は、過度のコスト競争による賃金・労働条件の悪化、コスト削減による安全性の低下、そして利益優先による公共性の喪失です。」まさにその後の日本で起きたことの先取りではないか。(派遣労働の拡大、航空やJRの安全性の喪失、耐震偽装事件、相次ぐ食品偽装) なぜ私たちは、ルール変更を受け入れたのか。 市場原理主義の起源はその経済思想の根拠はどのようなものか。 中南米で起きた「ネオリベラズム・サイクル」はどのような結果になり、何を教訓とするのか。 平和の問題とどのように関係するのか。 もうひとつの日本は可能か。 ……というようなことは、この本を読んでいただくのが一番いいのだが、また今度書きたいと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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ご紹介ありがとうございます。読んでみたいです。
(2007年10月25日 23時10分15秒)
世界10月号に小田さんの遺稿「世直し・再考 小さな人間の位置から」が載っています。
(2007年10月25日 23時18分18秒)
今の日本の社会の混乱の根源が、分かるようですね。
ご紹介、有難うございました。 教育も、混乱していますが、もう、競争といっても、 最初のスタートから、平等ではないのですね。 (2007年10月26日 18時40分18秒)
ribon5235さん
>ご紹介ありがとうございます。読んでみたいです。 ----- 品川本以来のお勧めです。 小田さんの遺稿はぜひ読んでみようと思います。 (2007年10月27日 00時20分34秒)
今日9729さん
>今の日本の社会の混乱の根源が、分かるようですね。 >ご紹介、有難うございました。 > >教育も、混乱していますが、もう、競争といっても、 >最初のスタートから、平等ではないのですね。 ----- 後発の日本はアメリカよりも劇的に変わっているように思えます。後で述べますが、ボリビアはこの悪夢のサイクルから抜け出しています。もうひとつの日本は可能だと思います。 (2007年10月27日 00時22分58秒)
この人の論からは、常に啓発されます。
現場に密着し、きちんとした仕事をしている人を訪ね歩いてルポを重ねてきた人ならではの説得力があります。 時々「クローズアップ現代」にも登場されていますが、ああ、この人が出ているあいだはまだ大丈夫だな・・と「リトマス試験紙」みたいに使わせていただいています。 でも、この人が危惧していた通りに進んでいるんですよね・・。 (2007年10月31日 00時44分58秒)
まろ0301さん
> この人の論からは、常に啓発されます。 > 現場に密着し、きちんとした仕事をしている人を訪ね歩いてルポを重ねてきた人ならではの説得力があります。 > 時々「クローズアップ現代」にも登場されていますが、ああ、この人が出ているあいだはまだ大丈夫だな・・と「リトマス試験紙」みたいに使わせていただいています。 > でも、この人が危惧していた通りに進んでいるんですよね・・。 ----- 不思議とこの人はまだテレビに出ていますね。たぶん「心ある」経済界から必要とされている人なのではないかなあ、と思います。 (2007年10月31日 20時42分21秒)
読みました。大変良かったです。ありがとうございました。80年代、浅利慶太は「CATS」に「内需拡大」と歌わせていましたがあの頃から仕組まれていたんですね。浅利天皇と呼ばれる彼は中曽根とも親しい。
ノキアのエピソードは私も感動しました。 (2007年12月30日 18時49分06秒)
ribon5235さん
>読みました。大変良かったです。ありがとうございました。80年代、浅利慶太は「CATS」に「内需拡大」と歌わせていましたがあの頃から仕組まれていたんですね。浅利天皇と呼ばれる彼は中曽根とも親しい。 > >ノキアのエピソードは私も感動しました。 ----- 読んだんですね。分りやすいところが非常にいいと思います。 第三の道を選びたいものだと思います。 (2007年12月31日 14時52分07秒) |
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