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カテゴリ:洋画(07)
監督、主演、編集 マイケル・ムーア
なんともうまい編集である。インタビューで相手がさりげなく「そういえば、医療費だけじゃなく(フランスでは)妊娠中の子守も保障されているわ」といえば、その直後にはその取材場面に切り替わる。そうやって次々と皆保険のない米国と手当ての厚いカナダや、欧州やキューバとの違いを浮き立たせる。ムーアにとって都合のいい事実だけを並べている。「だからこの映画は偏向している」と言う感想ならばその人は正しい。けれども、「だからこの映画は間違いだ」と言うのなら、それは大間違いだ。やはりこれは見事なドキュメンタリーである。偏向した(主張のある)事実をこれでもか、というほど見せる。ドキュメンタリーの王道だろう。しかもエンタメで楽しい。内容は深刻だけど、なぜか楽しい。おそらく、落語と同じである。演じている人間は絶対に笑わないが、内容はえらく皮肉が効いていて,くすくす笑が絶えない。 ラストタイトルで、(フランス人の言葉だけれどもと言う但し書きが一呼吸遅れてついてやはり笑うのだけれども)「アメリカ人は偉大だ。なぜなら自らの間違いを正すことが出来る」と付く。あるいは、ムーアは言う。「アメリカ人は今迄だってほかの国のいいところを取り入れてやってきた。ワインだってそうだろう?」その通りだ。近年、カリフォルニアワインの充実振りは目を見張るものがある。 日本には健康保険がある。けれども、この映画を見て気がつくのは、どんどんアメリカに近づいていっているという現実である。日本もほかの国のいいところをどんどん取り入れてここまでやってきたのだ。タダ、医療に関していえば、アメリカのいいところだけを取り入れてきたのだろう。ホント人事じゃあ、ない。「なぜアメリカ政府はフランスの悪口ばかりを言ってきたのか。フランスのこの現実を知らせたくなかったからだ。」それは日本にもいえている。フランスのこの福祉の充実振りを、あなたは知っていた?私はこれほどまでとは知らなかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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この映画の反響は大きかったですね。拙楽天ブログでのTBが、かつてなく多かったです。
(2007年11月03日 11時42分49秒)
よくありますね。双方の言い分を過不足なく並べて、最後に、「みんなで考えねばならない問題です」と結ぶタイプのもの。
マイケルムーアは、「俺はこう考えてる、どんどん反論してね」というスタンスでつくってます。 <反ムーア>サイトを運営している人の奥さんが病気になって医療費が払えなくなってサイトが運営できなくなったので、ムーアが匿名で寄付したら、そのサイトが復活してきて再び「くたばれマイケルムーア!」ってやりだしたのは面白かったけれど、そういうことを公開しちゃっていいのかな・・。 (2007年11月03日 12時15分10秒)
ちゃんと保険会社に払ってもらって治っている人も多くいるのでしょうから、偏っているといえば偏っていますが、でも、現実にこんなことが起きているのも事実。日本は年次改革要望書に沿ってアメリカの悪いところを取り入れています。
(2007年11月03日 13時18分19秒)
日本は確実にアメリカの方向に行きつつあるように感じます。
やはりこの国では、政府が国民を恐れていないのでしょうかね。 http://noraneko22.blog29.fc2.com/ (2007年11月04日 00時50分53秒)
かれこれ20年ほど前に感じたこと:
「米国はすばらしい国である.ただし,それは自分が健康である間だけのこと」. この後半は今も正しい.前半は9.11以後ウソになった. (2007年11月04日 01時42分14秒)
ribon5235さん
>この映画の反響は大きかったですね。拙楽天ブログでのTBが、かつてなく多かったです。 ----- 私は覚えきらないので、「具体的な事実」については省略しましたが、ribonさんはしっかり書いているので、読んだ人は感心したのでしょうね。 (2007年11月04日 08時01分08秒)
まろ0301さん
> <反ムーア>サイトを運営している人の奥さんが病気になって医療費が払えなくなってサイトが運営できなくなったので、ムーアが匿名で寄付したら、そのサイトが復活してきて再び「くたばれマイケルムーア!」ってやりだしたのは面白かったけれど、そういうことを公開しちゃっていいのかな・・。 ----- あのエピソードは面白かったですね。まあ、あんなことまで映画で出しちゃうから嫌われるのだと思いますけど‥‥‥。復活して「恥を知れ」と書かれてありましたね。 (2007年11月04日 08時03分43秒)
heliotrope8543さん
>ちゃんと保険会社に払ってもらって治っている人も多くいるのでしょうから、偏っているといえば偏っていますが、でも、現実にこんなことが起きているのも事実。日本は年次改革要望書に沿ってアメリカの悪いところを取り入れています。 ----- 私が一番偏っていると感じたのはそれぞれの国の税制の問題に切り込んでいない、処です。けれどもそれはわざとやっていると思います。話が散漫になるから。実際切り込んだらそれなりにムーア流に処理できるはずです。 日本の場合でも、「消費税あげるな、法人税上げろ」http://plaza.rakuten.co.jp/KUMA050422/diary/?ctgy=29 のところで書きましたが、フランスの企業の社会保険料の負担率は、日本のそれと比べるとはるかに高いわけです。だから税金の話をするなら、どのように税金を取るかの切り口から話を持っていけばまた新たな映画が出来る可能性があります。 (2007年11月04日 08時10分51秒)
ノラネコさん
>日本は確実にアメリカの方向に行きつつあるように感じます。 >やはりこの国では、政府が国民を恐れていないのでしょうかね。 >http://noraneko22.blog29.fc2.com/ ----- アメリカ経験の長いノラネコさんからそういわれると、説得力がありますね。 私も政府が国民をなめきっていると感じることが多々あります。 (2007年11月04日 08時13分21秒)
Ladybirdさん
> かれこれ20年ほど前に感じたこと: > 「米国はすばらしい国である.ただし,それは自分が健康である間だけのこと」. > この後半は今も正しい.前半は9.11以後ウソになった. ----- 地獄の沙汰も金次第。また書きたいと思いますが、ちょうど30年程ぐらい前からアメリカは経済政策を方針転換します。フリードマンの新自由主義を取り入れたためです。 (2007年11月04日 08時15分58秒)
映画に出てくるイギリスの男性(名前も経歴も忘れました)のコメントにうなされました。国民を支配しようと思えば、1、恐怖政治、2、健康、教育、希望を奪うこと、の2点。日本語ですけど「1+3のK」と覚えましょう。
(2007年11月04日 12時01分20秒)
ムシ博士さん
>映画に出てくるイギリスの男性(名前も経歴も忘れました)のコメントにうなされました。国民を支配しようと思えば、1、恐怖政治、2、健康、教育、希望を奪うこと、の2点。日本語ですけど「1+3のK」と覚えましょう。 ----- 国民の力で何度も支配者を変えてきた欧州の人々にはいくつ者学ぶべきところがあるでしょうね。この定義は有名なのかもしれません。イギリス映画の「フォー・ベンデッタ」にも出てきていたし。 (2007年11月04日 22時34分52秒) |
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