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カテゴリ:07読書(ノンフィクション)
「ゲバラ日記」(角川文庫)はなかなか前に進めなかった。有名な本なので、これを読めば晩年のゲバラの思想は分るのかと思っていた。しかし、書いているのは延々とボリビアのジャングルをゲリラとして進むゲバラたちの日常なのだ。巻末の高橋正による「ゲバラ小伝」によって、ヤットこの日記の位置が分ってくる。 チェ・ゲバラ。1928年、アルゼンチンの中産階級の家庭に生まれる。医師を志すが、南米諸国を旅するなかで革命の必要性を痛感。メキシコで出会ったカストロとともにキューバ革命を牽引し、成功に導く。その後、ラテン・アメリカ全体の革命のためにキューバを去り、ボリビアでの活動を続けたが、1967年10月9日、政府軍に捕らえられて殺害される。 この本は、1966年11月から67年にかけてほぼ一年間毎日つけたゲバラの日記の全文である。タダひたすらジャングルを進む。時に戦闘がある。どうやら、そのようなゲリラ活動を進める中で、ボリビア住民の支持を勝ち取り、都市部ではなく、地方から革命勢力を育てようとしたらしい。けれども、ボリビアの革命勢力との齟齬、仲間の脱落、或いは戦死、ジャングルでの過酷な活動による病気、飢え、裏切り等により、ついにボリビア軍隊によりゲバラを捕らえられたらしい。日記は政府軍の陽動作戦を疑う記述、「標高2000メートル。」と10月7日に書いて終わる。このゲリラの活動方針が正しかったのかどうかは私には判断できない。いや、間違っていたとしても、キューバでの大臣の地位をかなぐり捨て、あくまでも初心のラテンアメリカ全体の革命のために身を投げたチェのことを悪く言う人間はほとんどいないようだ。 月末に必ず行動の「月間分析」を書いている。時々父親や娘の誕生日の一言のみが書かれている。ジャングルでの活動は本当に苦しかったようだ。ゲバラ自身も喘息でくるんでいたが、隊員たちもさまざまな病気を患った。飢えでついに子馬を潰したりした。 ゲバラの死後、南米は約30年間、富むものはますます富み、貧しきものはますます貧しくなった。そしてやっと最近になって、ラテンアメリカのアメリカからの独立が現実的なものになってきた。反米政権が次々と実現し、ボリビアさえも、06年に親キューバの左派モラリス政権が誕生する。大統領が、日本の憲法を真似て戦争放棄を盛り込もうとしているということは既に述べた。 最近、ラテンアメリカの輝ける星チャベス大統領の初の黒星の報道があった。、 チャベス改憲案、小差で否決 「終身大統領」阻まれ打撃 この報道を読んで、ラテンアメリカの革命は着実に進んでいるという印象を受けた。この報道では、まるで今回の改憲案の中心は「終身大統領制」にあるかのような書き方であるが、本質は違う。と思う。改憲案の中心的課題は、国の制度を「社会主義国にする」と言うことだった。それはまだ時期早々である、と国民がきちんと意思を表明できたのである。民主主義の着実な進歩だろう。それに終身大統領制を目指したのではない。多選を認めようとしただけで、チャベスが大統領に不適だとすれば落選させればすむことなのである。 映画「モーターサイクルダイアリーズ」で若きチェ・ゲバラはハンセン病患者の前で宣言する。「はっきりしない見せかけの国籍によってアメリカ(ラテンアメリカ諸国)が分けられているのは、全くうわべだけのことだと、この旅のあとでは前よりももっとはっきりと、考えています。」ラテンアメリカの統一を夢見、その没後40年たった今年、中南米はその夢に向かって確実に進んでいる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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