再出発日記

2009/08/11(火)00:12

「サマー・ウォーズ」旗、立ちました

邦画(09~)(121)

「よくないのは、食べないことと、独りでいることだよ」 最初に仮想空間「OZ」の説明が続く。いわゆる画面いっぱいに綿密に作画されており、前回「時をかける少女」よりも金をかけていると納得する。前回の成功で、思いっ切り潤沢な資金で作られた文字とおり今年を代表するアニメ作品だろうと思う。 監督 : 細田守 脚本 : 奥寺佐渡子 主題歌 : 山下達郎 声の出演 : 神木隆之介 、 桜庭ななみ 、 谷村美月 、 富司純子 、 斎藤歩 スピード感があふれ、人の人情と表情と感情を描き分けて、二時間近くを退屈させないエンタメ精神に撤している。 バーチャルの世界で何でもできる世界が確立しつつある。その危険性をうったえるのと同時に対抗できる可能性として旧家の大家族の『人のつながり』を持ってきた。ありがちかもしれないけれども、説得力のあるストーリーをつくっている。それを保障するのが旧家の2-30人にも及ぶ登場人物なのであるが、せりふに頼らないで、絵やしぐさだけで彼らの性格ならびにちょっとした人生までもあぶり出るようにしているのは、たいしたものだと思う。(たとえば、侘助に対する人々の態度が微妙に違う。子供のころの対立関係までもが想像できるつくりになっている) けれども、何か物足りない。なんなのだろう。 先々週の金曜日に、この映画の前宣伝として日テレで『魔女の宅急便』をしていて、私はつい最後の15分間だけ観ていた。魔女のキキは男友達が飛行船から落ちそうになっているのをテレビで見て、街に飛び出す。おじさんから『デッキブラシ』を貸してもらって、そのときまで飛べなかった魔法を使おうとする。喧騒がなくなり無音の世界。キキの髪が逆立つ。デッキブラシが逆立つ。彼女は飛び始める。コントロールできない。スピードが増していく。街中の隅々まで行き届いた作画。彼女は飛んだ。地中海のみごとな風景。空を飛ぶってこういうことだったんだと思わせるみごとな映像。上映当時はこの映画をマイナーがメジャーに擦り寄ったいやらしい作品に感じていたのだが、いま改めて見て、本当に緊張感のある作品だった。デッキブラシが逆立つところで、私の肌も逆立ったような気がした。このセンスとオリジナリティを超える作家はまだ出てきていない。 細野監督にセンスはあると思う。 けれどもオリジナルティはまだない。逆立つようなアイディアがない。(あるいは宮崎駿の中にあるようなあまりにも我儘な作家性というべき物なのかも知れない) これから期待して行きたい。 よかったのはおばあちゃんの最後の手紙と小磯健二君の『よろしくお願いします』というこの場に及んでもの謙虚さである。 このアニメは日常SFとでもいうべきアニメの王道作品なのであるが、人工衛星が落ちてあれだけの被害で終わるものなのだろうか。まあアニメだからどうでもいいといえばどうでもいいのだけど、そういう水準のアニメではないと思っているので気になっています。

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