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カテゴリ:邦画(09~)
監督 : 若松節朗 原作 : 山崎豊子 出演 : 渡辺謙、三浦友和、石坂浩二、松雪泰子、鈴木京香、山田辰夫、香川照之、木村多江、清水美沙、鶴田真由、柏原崇、戸田恵梨香、大杉漣、西村雅彦、柴俊夫、風間トオル、神山繁、菅田俊、草笛光子、宇津井健、小林稔侍、加藤剛、品川徹、田中健 山崎豊子がOKを出しただけあって、プロットは長い原作を上手くまとめてていると思う。あの長い原作を一本の作品にするのならば、御巣鷹山事故を導入部にするのは必然です。 ただ、切れ味は鈍いのではないかと思い、実は封切りの日に観ていたにもかかわらず、今日まで合格作品として写真付きにしようかどうしようかずっと迷っていた。けれども、今日のこの記事を見て私の思っていた以上に切れ味は鋭かったのだということが分り、写真付きで書くことにしました。 日航社内報で「沈まぬ太陽」批判 「客離れ誘発」法的手段も 社内報ではこんなことを書いているらしい。 映画で描かれている社内の報復人事や役員の不正経理、政治家・旧運輸省幹部らへの利益供与や贈賄について「こんな不正があるわけがない」と一刀両断。「国民航空」の名称やジャンボ機墜落事故の克明な描写から「『フィクション』と断っているが、日航や役員・社員を連想させ、日航と個人のイメージを傷つける」と反発している。 よくもまあ、社内報とはいえ、こんなことが書けるものだ。私は山崎豊子を「不毛地帯」から「大地の子」「沈まぬ太陽」と読んできているが、次期主力戦闘機疑惑事件、中国残留孤児、日航問題と世のタブーに挑戦してきて、一度たりとも訴えられたことがないことを知っている。それは彼女の徹底的な取材があったからである。日航の場合は、経営者側の「取材拒否」にあったからこそ、それ以外の取材はまさに徹底してやったということを知っている。(御巣鷹山編ではだからこそ実名の小説にもなった)訴えれるものならば、訴えてみればよい。それこそ、「報復人事や役員の不正経理、政治家・旧運輸省幹部らへの利益供与や贈賄」が白日の下に晒されて都合が良いだろう。日航は結局このころから全然「反省していない」ということなのだろう。現在の経営危機はまさにその膿みの決着なのであろう。 木村多江や山田辰夫、香川照之 加藤剛、品川徹のように大河ドラマらしく、場面場面では見どころ役者がいて、存在感を出している。木村の悲痛な呟き、香川の揺れ、加藤の「政治家」としての空恐ろしさ、瀬島龍三の品川徹の不気味さ、そして故山田辰夫のお客様係の冷徹さ。 ただ、映画として一本芯を通す印象的な場面がいまひとつ作れていない気がしたのである。ナショナルフラッグの旗の下に魑魅魍魎渦巻く組織の中で「筋を通す」ことの困難とかっこよさを恩地と行天に対比させて描くことこそがこの映画の醍醐味なのだろう。その点で、行天がいまひとつ浮き上がらなかった。演技の問題ではなく、演出の問題だろうと思う。国民航空のあのシンボルをもっと効果的に使うとか、最初と最後をきちんと「対」として見せるとか、あと一つ映画的な工夫が欲しかった。 しかし、みんなの評判を読むと、私の思った以上に「思い」は伝わっているようなのだ。私はないものねだりをしていたようだ。 面白いのは、ブログ評を読んでいると、非常に多くの人が「どうして仕事をやめなかったのか不思議だ」という意味のことを書いている。やっぱり今の若い人にはわからないのか、と苦笑いする。今ほど簡単に仕事を辞める事が社会的に認知されていなかったということもあったかもしれないが、それ以上に一つの労組が今では八つの労組に分裂していることからも分るように、徹底的な「戦う労組つぶし」があった。苦労したのは恩地だけではない。恩地はそれを良く知っていた。だからこそ、「逃げる」ことは出来なかった。彼の言う「矜持」とはそういうことなのである お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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仰るとおり苦労したのは恩地だけではないですよね。しかも終身雇用制度が当たり前だった時代において、一度勤めた会社、それもそこらの中小企業ではなくて、天下の日本航空なのですから。私だったとしても辞めません。もちろん恩地のように闘えはしないでしょうけども、たとえ左遷閑職でも給料だけは良いですし、なにより家族を養う義務がありますから。
家族に対して責任を果たすのに理想論だけを語ってはいられないです。 (2009年11月04日 00時08分31秒)
このところ、僕自身が見てない(いずれ見るつもりながら、、逃し続けてるものが多いです)映画・番組のことが多いので、なかなか先へ読み進められず失礼しております。
書いておられるとおり「なぜやめなかったのか」というのは、今の世相をよく反映していますね。 また、その組織の中に居て、その組織を変えることが死ぬほどしんどく、また失うものが大きいことは、僕自身本当に痛感しながら日々を生きてますが、しかし、それでも、やはり、その仕事を全うすることで、少しでもよくしていくこと、、を「諦めない」ことが一番、各人に求められることのように思います。 この小説や映画に触れて、主人公に快哉を送るのみでなく、自分がどのように生きるか、どのように「仕事」というものに向き合うか、、ということに気づけば、「他の人の仕事」を見る目もまたより確かになっていくことでしょう。それはひいては、賢明な有権者を育てることにも(政治もまた仕事ですし、かつ、多くの人の仕事に作用していく仕事ですので)つながるだろうと思います。今はその逆の風潮(自他ともに軽い)なのかもしれませんね。 (2009年11月04日 00時34分31秒)
なるほど~、写真付きにするか迷ってたんですね^^。
あの役者、品川徹っていう名前ですか。不気味でしたね~。ちょい役に至るまですごい役者陣でした。 「わるいやつら」を際だたせることと、主人公の「いいこぶりっこ」の対比が鼻につく人もいるかもしれません。しかし、私も「矜持」という言葉に深く感銘しました。 (2009年11月04日 07時15分53秒)
ちなみに、不毛地帯が書かれたのはロッキード事件の前です。
それと、山崎豊子のエッセイによれば、「沈まぬ太陽」連載当時から、読者から自分なら会社を辞めているという感想が書かれた手紙が届いていたそうです。 (2009年11月04日 21時36分15秒)
変な言い方だけど、「闘うだけの価値」がある会社でもあったんでしょう。
日航もひどいけど、「闘うだけの価値」がない会社よりもマシかも知れません。 (2009年11月04日 22時56分19秒)
KLYさん
>仰るとおり苦労したのは恩地だけではないですよね。しかも終身雇用制度が当たり前だった時代において、一度勤めた会社、それもそこらの中小企業ではなくて、天下の日本航空なのですから。私だったとしても辞めません。もちろん恩地のように闘えはしないでしょうけども、たとえ左遷閑職でも給料だけは良いですし、なにより家族を養う義務がありますから。 >家族に対して責任を果たすのに理想論だけを語ってはいられないです。 ----- 映画でも、もと労組員は冷や飯を食わされている様子は映されていましたが、第二第三労組を作って、団結そのものを切り崩していくさまはさすがに描かれてはいませんでした。そのつらさを一身に表現したのが、香川照之であり、さすがの演技でありました。 (2009年11月05日 01時07分12秒)
クラシカさん
映画では、家族のものがたりも強調されていて、最初父親を嫌っていた息子が、自分も仕事をしだすと父親のことを理解していくのです。牛丼屋の場面で、父親が息子に紅しょうがを取ってやる、なかなかいい場面でした。あと家族全員で蕎麦を食べながら「お父さんは仕方ないね」納得する場面、これはたぶん映画オリジナルだと思いますが、成功していたと思います。 (2009年11月05日 01時14分35秒)
ヨーコ1015さん
>なるほど~、写真付きにするか迷ってたんですね^^。 >あの役者、品川徹っていう名前ですか。不気味でしたね~。ちょい役に至るまですごい役者陣でした。 >「わるいやつら」を際だたせることと、主人公の「いいこぶりっこ」の対比が鼻につく人もいるかもしれません。しかし、私も「矜持」という言葉に深く感銘しました。 ----- 品川徹は実際は役名は違っていたのですが、瀬川龍三がモデルだということは明々白々でした。首相は中曽根です。加藤がすると、一見物分りのいい政治家のようで、やっていることは冷たいという加藤剛が今までしたことの無いような役柄で、不気味でした。品川徹は顔だけで言うと、藤沢周平そっくりなのです。最初親しみを覚えていたのですが、やがて不気味な男に見えてきたのはさすがでした。 (2009年11月05日 01時19分39秒)
nekoさん
>ちなみに、不毛地帯が書かれたのはロッキード事件の前です。 そうなんですか!ごめんなさい、直しておきます。 >それと、山崎豊子のエッセイによれば、「沈まぬ太陽」連載当時から、読者から自分なら会社を辞めているという感想が書かれた手紙が届いていたそうです。 ----- それはそういう感想は来たでしょうね。私も恩地がやめなかったのは、時代のせいだとは思いません。やはり、彼自身の「矜持」だと思います。 (2009年11月05日 01時23分49秒)
ももたろうサブライさん
>変な言い方だけど、「闘うだけの価値」がある会社でもあったんでしょう。 >日航もひどいけど、「闘うだけの価値」がない会社よりもマシかも知れません。 ----- なんだか意味深ですね。お疲れですか? (2009年11月05日 01時25分07秒)
KUMA0504さん
>ももたろうサブライさん >なんだか意味深ですね。お疲れですか? ----- 展望がなくやめたい、という気分かも知れません。 (2009年11月05日 21時12分06秒)
ももたろうサブライさん
>展望がなくやめたい、という気分かも知れません。 ----- おやおや、「展望が無くてやめてしまった」私には言葉が無いのですが、恩地には「闘うだけの価値のある会社」ではなかったかもしれません。ただ、仲間もいたし、家族もいたからとどまれたのだと思います‥‥‥。 (2009年11月05日 23時37分43秒) |
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