再出発日記

2010/08/29(日)09:29

「カラフル」生きているという色

邦画(09~)(121)

ぼくは死んだ、けれども冥府行きの改札場所で突然「修行」を言い渡される。自殺で死んだ男の子の魂と入れ替わって暮らしてみろ、と。そうやって、ぼくは気乗りがしないまま中学三年生の半年を生きる。 監督 : 原恵一 原作 : 森絵都 声の出演 : 冨澤風斗 、 宮崎あおい 、 南明奈 、 まいける 、 入江甚儀 、 中尾明慶 、 藤原啓治 、 麻生久美子 、 高橋克実 別にアニメでないとけっして描けないような作品ではないのかもしれない。本当は登場人物たちの繊細な演技が必要な作品なのかもしれない。ただ、アニメにした狙いは見たあと一日たってやっと得心が行った。実写では生なま過ぎるのである。ここで描かれるのは、いったん死んだ男(の子)がみる下界の世界である。まるでアニメのように見える世界がちょうどいいのかもしれない。 自殺した中学生に対して家族、特にお母さんは腫れ物に触るように接していく。中学生はある理由があってお母さんに冷たく当たる。物語の終盤、閉ざされた中学生の心が開かれる場面がある。まさかあんななんでもない場面がそれになるとは思っていなくて、不覚にも泣かされてしまった。なぜ泣かされたのか。特にすごい映像が流れるわけでもなく、中学生とお母さんがすごい台詞をしゃべるわけでもない。やっぱりそこに至るまでの原恵一監督の映像があまりにも丁寧だったからなのだろう。それともうひとついうと、お兄ちゃんにやられた。 カラフル、の意味は、中学生自身が気がつく。そのときやっと、このアニメの主要トーンがグレーだったことに気がつくのである。そして思い出す色は、たとえば金木犀の黄色、絵画の中の海の色、夕食のおかずのトマトの色、お父さんと行った紅葉の山なのである。 生きている、ってことは、くすんだ色の中に鮮やかな色を時々見つける、ってことなのかもしれない。中学生に見てほしい。

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