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2011年05月16日
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「茨木のり子集 言の葉3」ちくま文庫
このシリーズ本たいそう売れたそうな。結局彼女の詩のほとんど、彼女の短文のほとんどを網羅している。時代がやっと茨木のり子に追いついてきたのかもしれない。

前にも書いたけど、詩は何度も何度も引用されて、初めて生きてくる。だから、私はできるだけ彼女の詩をブログで紹介したいと思う。

以下のこんな詩の中に、みごとに旅のエッセンスが籠められていたりする。

「顔」
かくれ里
と呼びたいような
ずいぶんへんぴな山奥の村で道に迷った
岨道を通りかかった老女に尋ねると
やわらかなお国なまりで指さしてくれた
あねさんかぶりの手拭の下の
ほのかな笑顔のよろしさ
おうなという忘れていたことばがぽっかり浮かび
まさか
山菜の精ではないでしいょうね
女も
晩年に至って
こんなふうにじぶんの顔を造型できる人がいた
この里に
それを認めうるひと ありやなし
あわてて
まばたきのシャッター
わが脳裡に焼きつけた
いつでも取り出せる
大切な一枚として


3月初めに読んだとき、以下の詩は「私の合格作品」の中に入ってはいなかった。けれども、震災が起きて、計画停電が起きて、エネルギー問題を考え始めたときに、この詩が「真実を衝いている」ことに思い至った。

「時代おくれ」
車がない
ワープロがない
ビデオデッキがない
ファックスがない
パソコン インターネット 見たこともない
けれど格別支障もない

  そんなに情報集めてどうするの
  そんなに急いで何をするの
  頭はからっぽのまま

すぐに古びるがたらくたは
我が山門に入るを許さず
  (山門だって 木戸しかないのに)
はたから見れば嘲笑の時代おくれ
けれど進んで選びとった時代おくれ
      もっともっと遅れたい

電話ひとつだって
おそるべき文明の利器で
ありがたがっているうちに
盗聴も自由とか
便利なものはたいてい不快な副作用をともなう
川のまんなかに小船を浮かべ
江戸時代のように密談しなければならない日がくるのかも

旧式の黒いダイアルを
ゆっくり廻していると
相手は出ない
むなしく呼び出し音の鳴るあいだ
ふっと
行ったこともない
シッキムやブータンの子らの
襟足の匂いが風に乗って漂ってくる
どてらのような民族衣装
陽なたくさい枯草の匂い

何が起ころうと生き残れるのはあなたたち
まっとうとも思わずに
まっとうに生きているひとびとよ


そうだ「何が起ころうと生き残れるのはあなたたち/まっとうとも思わずに/まっとうに生きているひとびとよ」。






最終更新日  2011年05月16日 07時45分14秒
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