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2011年09月09日
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【送料無料】日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか
著者は1950年生まれの哲学者である。釣りが好きらしく、田舎によく行っていたらしい。やがて群馬県の山村、上野村で東京と同じくらいの日数を過ごすことになる。そういう生活からひとつ気がついたことがあるらしい。

1965年以降は、あれほどあったキツネにだまされたという話が、日本の社会から発生しなくなってしまう。それも全国ほぼ一斉にである。

著者はその理由をことあるごとに山村の「かつてだまされた経験のある」人や「だまされたという話を人づてに聞いている」人から、聞いてみる。そして幾つかに分類してみせる。

そこで浮かび上がるのは、単なる田舎の文明化とか、環境破壊だけにとどまらない、日本人の精神構造の変化を感じ取るのである。

例えば著者は1965年の革命をこのように整理する。
ひとつ、高度成長期の人間の変化である。「人間が経済的動物になった」「経済的価値があらゆる物を優先する価値になった」
ひとつ、「科学の時代」に対する人間の変化。キツネにだまされるのが当たり前の話から迷信へと変わっていった。
ひとつ、コミュニケーションの変化。電話とテレビである。情報は全国一律の、しかも時間差がなく伝えられるものになった。
ひとつ、教育の向上と共に起こった村人の精神世界の変化。必ず「正解」があるような教育を人々が求めるようになったとき、「正解」も「誤り」もなく成立していた「知」が弱体化していった。
ひとつ、死生観の変化があった。都市の様に死が個人のものになっていった。伝統的な死生観は、死ぬと魂は村にとどまる、という考えが薄れていった。その結果、響きあっていた自然、あるいは自然の生き物たちとの結びつきが変わったとしても、それは当然の結果であろう。
ひとつ、自然観の変化自体があった。かつて日本では自然はジネンと発音されていた。(略)ジネンはオノズカラ、或いはオノズカラシカリという意味の言葉である。今日でも私たちは「自然とそうなった」とか「自然の成り行き」という表現を使うが、(略)自然に帰りたいという人々の伝統的な思いはシゼンに帰るということより、ジネンに帰る、つまりオノズカラの世界に帰りたいという思いだったということがわかる。オノズカラのままに生きたい、ということである。

ここまでは、「人間のキツネにだまされる能力が衰弱した」という説である。

ひとつ、キツネの側も変わったのかもしれない。1956年からは「拡大造林」という新しい形式が導入された。天然林を伐採し、跡地にスギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツなどの苗木を植え、育成していくもので、この森の変化が「人をだますことの出来る」老ギツネが暮らせない時代を作りだした。焼畑も消滅した。野鼠や野うさぎを獲るために養殖ギツネが放牧されたことも影響しているかもしれない。

おそらく、これらの説のすべてが「キツネにだまされることのなくなった」事の理由なのであろう。

著者の論理展開は一部強引断定的なところがあり、私は全面的に賛成できないのだけど、先に人類学的に見て日本では史上類を見ない急速な骨格の変化がちょうどこの頃に起きていることからも、1965年を堺に全国的に「キツネにだまされる能力」を日本国民の共有的な能力として喪失したことに、私は同意するものである。

実は、この本を読みながらしきりに、昔大学時代、常民文化研究会(民俗学研究会のようなもの)というサークルで民俗調査をしていたときのことを思い出していた。あのとき、1981年の夏のことだけど、ふと村人から「じつはね……」と教えられたことがサークル内では後々までに話題になったものである。「あの家はキツネつきの家だったんだよ」。そういうものが信じられていた時より、15年経っていた。ならば、そのような形で聞くことは充分にありえただろうと思うのである。

また、あの村に行きたい(ホントは台風がなければ、行く予定だった)。しきりに思った。






最終更新日  2011年09月10日 00時09分57秒
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