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再出発日記

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2012年06月22日
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カテゴリ:中江兆民
前野良沢、杉田玄白、渡辺崋山、高野長英、と続く洋学の思想は、明治に至りて、二人の巨人を生む。福沢諭吉と中江兆民である。

福沢諭吉と中江兆民が、近代国家建設の出発点にあたり、どのような文明論、国家論を構想したか、それを見据えることで、内政、外交ともに息詰まっている現代日本の課題が浮き彫りになる、そういう本だと思う。


「福沢諭吉と中江兆民」松永昌三 中公新書
諭吉は日本の独立発展のためには、西洋文明の受け入れは必要不可欠と見ていた。文明を善、正義、力、進歩と見ていて、野蛮→半開→文明の発展段階説をとっていた。衝突があった時に、善や正義は常に文明の側にある。文明化が他の地域の植民地獲得をまねくことも、一定の批判は持っていたが不可避と見ていた。西欧列強の植民地支配を避けるためには、西洋文明を受け入れ一刻も早い国家的独立を達成し、さらには他の地域の植民地獲得に進む以外にないのである。その意味では、富国強兵は必然的選択であった。


さて、中江兆民はどうか。兆民は進歩史観は持っていなかった。思えば、進歩史観は世界史的に見ても19世紀の産物である。それまでも現状批判とか現状改革ということはあった。しかしそれは、古い時代を理想とみて、旧に復す、復古という観点から、現状批判するのが普通だった(ルネサンス、王制復古、聖人治世)。ルソーの社会契約論も、過去に神と民の約束ということで、自由平等友愛が保証されたのである。兆民は中国古代三代の治世を理想状態にとらえていた。そこから見えるのは、「文明開花」は理想社会ではない。兆民はヨーロッパ人のアジア・アフリカ人への態度を厳しく批判しているが、同様に日本政府のアイヌ政策も厳しく批判している。兆民は「開花をむしろ悪とさえみているのである」。一方、福沢もヨーロッパ人のアジア、インド人への蔑視の場面を見て記しはいる。しかし、彼はだから早くヨーロッパ波に文明開化し、「勝ち組に入るべきだ」という主張になるのである。


福沢は、国家間の交際(外交)は基本的には力関係で決まるのであって、一個人の道徳と一国の道徳を混同すべきではないことを強調する。その帰結が「脱亜論」であった。


兆民も文明と侵略は一体だと考えていた。しかし、国家の道徳と個人の道徳を分離してはいけないと考えていた。兆民が目指していたのは、富国強兵ではなく、道義立国であった。それはつまり、福沢の功利主義、実用主義への批判にもなるだろう。


福沢の実用主義は、「西洋近代化が国際社会で生き残れるか、否かを決める鍵」だと信じられている時代にあって、確固とした現実的方策を示したもので、時代の要請に応えたものだっただろう。問題は、福沢の言う実学の精神が真に近代日本人の血肉になったか、ということだろう。


山県有朋は富国と強兵は相互い矛盾する事を承知して強兵を選択していた。福沢は結局その言い分に乗っている。「東洋の政略果たして如何せん」(明15)で、情勢の逼迫のために、増税も朝鮮強硬策も、「国民が選択しなくてはならない」と説く。つまり賛成している。


兆民はその時どう論じたか。ひとつ「論外交」がある。富国強兵策を批判、富国と強兵は矛盾する、「富国は為政者の目的だが、強兵は結局万止むを得ない時の一策に過ぎない」と説く。日本のような小国が進む道は、スイス、ベルギー、オランダよような小国・中立主義を取るべきだと説く。


福沢の言う富国強兵の道。兆民の言う小国主義。明治の始めに2人の思想家が二つの日本の進む道を示していた。これは、現代日本にも未だ突きつけられている「課題」なのではないか。





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最終更新日  2012年06月23日 00時01分18秒
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