再出発日記

2012/07/15(日)01:19

『楊令伝13」裏切り者は誰か

水滸伝(78)

「楊令伝13」北方謙三 集英社文庫 「第一、戦いをやめようと思ったら、やめれるのか。やがて、戦いは起こる。その準備を梁山泊はしている。いいか、いずれ交易は、商隊を出さなくても出来るようになる。西域の国々から、隊商がくる。日本からも、南の国からも、交易船がくる。物が梁山泊に集まり、散っていく。梁山泊には、金銀がのこるだけだ」 「なるほどねえ」 「そんな国を周囲が許すと思うか。税が安く、商いが自由な国を。よってたかって、潰しにかかる。それは、楊令殿も呉用殿も、よくわかっているだろう。どう凌ぐか。楊令殿の頭は、それで一杯のはずだ」 「凌ぎきったら?」 「周囲は、自然に梁山泊になる。そうなるために流れる血は、童貫戦の比では無いだろうが」 「凌げなかったら、潰れるだけかい?」 「その時、私に何が出来るのか。ほかの商人は知らず、紡鵺盛栄に、なにができるか。いまは、そればかりを考えているのだ、私は」 「楊令殿は、北京大名府を、呼延陵に占領させたよ」 「戦をやりたがっている連中を、宥める意味もあったのだと思う。いずれ、周囲が梁山泊と同じようになるか、試しているのだとも思う。呉用殿の考えが大きいだろうが」 「いずれにせよ、戦はある、 とあんたは思っているんだね?」 「思っているよ。生きるか死ぬかの戦いを、梁山泊は通り抜けるしかない」 「底なし沼を、掻き回さなくてもか」 「沼が、口を開けて嗤っているだろう。人の愚かさや醜さを飲み込もうとな」 「わからないよ、あたしには」 「酔っているものな」 「素面だって、わかりゃしないさ」(159p) 梁山泊、金国、斉国、南宗、入り乱れての混沌の中で、岳飛は僅かに蕭珪材に辛勝する。先が見えない戦乱。楊令の理想は、果たして実を結ぶだろうか。 梁山泊から、一番に裏切り者が出るとしたら、戴宗、韓伯竜、そしてこの盛栄を予想していた。処が、この巻で彼らは一様に「漢」を見せる。意外にも最初の裏切り者は「あいつ」だった。思うに、若いということは、こういうことなのかもしれない。 2012年7月3日読了

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