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カテゴリ:鼠の歌
鼠の歌 自分評伝の試み1 小学校3年1
倉庫を解体した時に、昔のノート類を放り込んだダンボール箱が出てきた。小学校時代のマンガノート4冊に中学校時代から始めているらしい詩のノート4冊に、日記類が5冊ほどある。私はこんなものをまとめた覚えはない。おそらく私が大学に行った時に、妹が私の元いた部屋の住人になって本棚にあったいくつかの日記やノート類をまとめたのだと思う。修学旅行の時に10冊も買いこんだポストカードも入っていたから、その箱自体は本棚の1番下に私がしまっていて忘れていたのかもしれない。 このマンガノートは、小学校3年の冬の頃に書き始めて、小学校4年の春まで書いて突然終わっている。その後も幾つかマンガは書いていたので、これは私がストーリーマンガを書き始めた最初の頃のもので、他のは散逸したらしい。 最初のマンガは、当時大好きだった週刊少年ジャンプ連載の本宮ひろ志「男一匹ガキ大将」が表紙になったショウワノート20P(20円)の数ページに書かれている。このノートの表紙は本宮ひろ志がショウワノートのために書き下ろしたのだと思う。今見ると、顔の輪郭は筆を使っている。線は少し歪んでいるが、そんな事お構いなしにいっぺんに書かれている。迷いのない勢いのある線。当時少年ジャンプは、マガジン・サンデーの後塵を拝し、なんでもやってやろうという感じだった。その1番の象徴がこの「ガキ大将」であり、まだ単行本数巻ぐらいしか出ていなかったとは思うが、その後のジャンプ旋風の大黒柱になることを子供心に見抜いていたのではないか。 マンガは幼稚園の頃に初めて近所の駄菓子屋「あかざわ屋」に行った時に読み始めた。お店の前に縁台を置いてあるスペースがあり、夏はかき氷、秋・冬はたこ焼きをそこで買い食いをするのが子供たちのタイムスケジュールの一つだった。たこ焼きは四個入りで10円だった。かき氷は1番安いレモンが20円くらい。おこずかいを握りしめて毎日のように通っていた。そこに半年も一年も置かれてみんなに読まれてボロボロになった「週刊少年サンデー」や「週刊少年マガジン」が山積みされていたのである。夏の日差しをもくもくと茂った木々が遮ってくれていたのを覚えているから、夏だったのだろう。私は、星飛雄馬と花形満の最初の対決場面を見た。その瞬間から私はマンガに魅了された。と、思う。その場面、球が一塁上でぐるぐる回って燻っているという有名な(?)場面である。マンガはかなり擦り切れていたから、夏休みよりも前の発行だったかもしれないが、ともかく梶原一騎の「巨人の星」連載の最初の頃だった。 ※気になって調べてみた。「巨人の星」連載開始は1966年6月だった。あの場面は、連載4-5回目だから、おそらく発売一週目か二週目の「少年マガジン」を読んだのだろう。私は幼稚園年長組だった。 サンデーのオバQもおそまつ君もその頃に出会った。ともかく時間を忘れて、そこにあったマンガは全て読破したし、やがては兄と共同でマガジンは毎週買うことにしたし、不足のマンガは友達の家や散髪屋や「あかざわ屋」で全て読むという生活が始まった。 白い紙があると、マンガの落書きをしていた。今でもオバQやパーマン、怪物くんのドラキュラなどは目をつぶっても描ける。 落書きから始まり、将来は漫画家になりたい、そのために先ずはマンガを描いてみたい、ということになるまで約3年以上かかったらしい。 子どもはそうやって、ある時「夢中」になるものに出会う。それが私にとっては夏の日の縁台の上だった。 あの時、あの場面の「何処」に、私はビビビと来たのか、この文章を書くまで考えた事も無かった。しかし、考え出すとそれはとても不思議なことだ。私はその後、野球の魅力にとりつかれたわけでもなかった。手塚治虫のように、絵が動くように描けることに魅了されたのでもなかった。スーパーヒーローに憧れたのでもなかった。「巨人の星」のアニメ化はまだ先の話である。 あの場面。「巨人の星」の表紙をめくると、一塁上で球がぶすぶすと煙をあげながら回り続け、星飛雄馬と花形満と他の選手が呆然とつったっている場面。やがて、誰かがきがついて花形満にタッチをする。塁審がアウトを宣告する。私は不思議に思って前の号を探して読んだのだろう。そうすると、絶対受け取れないような花形満が打った打球を、星飛雄馬(?)がスパイクの裏で蹴って止めた事がわかる。そういう事態に陥ったのは、そもそも星飛雄馬の球が異常に速かったからである。なぜ、そんなに速くなったのか。父親星一徹のスパルタ教育があった事を知る。一号一号に話の盛り上がりがあり、とんでもない事が、圧倒的なマンガというリアリティで描かれていた。私はもしかしたら、「マンガの持つドラマトゥルギーの力」に魅了されたのかもしれない。 そのひとつの「根拠」が、もしかしたら最初の「連載マンガ」かもしれない、この「やきゅう王子」である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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