再出発日記

2015/05/16(土)14:27

鼠の歌3 小学4年 〈1〉

鼠の歌(5)

鼠の歌 自分評伝の試み3 小学校4年 〈1〉 「男一匹ガキ大将」のノートから描き始めたマンガノートには、実はもう一つの連載が始まっている。「青空へアタック」というマンガである。 なぜバレーボールだったのか。わからない。当時「巨人の星」と人気を二分していたアニメの「アタックNO1」の影響があった事は明らかだとは思う。それ以外はどうしても思い出せないから、多分描きやすかったのだと思う。表紙を見ると、ちゃんとボールは特徴をとらえている。どうやら「エスファイター」というチームの女の子らしい。表紙にはものすごい「ドロップ魔球」が描かれているが、その後この魔球が描かれる事はない。つまり描いているうちに、他の魔球にとって代わられることになる。そういう移り気の早さは現代の私に通じている(^_^;)。 女の子らしい表現にも気を使っている事に、我なからビックリする。ブルマーだからといって変な目で見ないで欲しい。当時女の子の体操服姿はそれしかなかったのだから、仕方ない。足の丸みや、靴のリボンなどはよく描いているな〜、と思う。今の私ならば描けない。 話は、猛特訓のチームに「あのう、チームにいれてください」と登場する主人公の女の子という展開で始まる。(一話では全員名前がない)キャプテンは「こいつはこれまで1番てごたえがありそうなやつ」と冷や汗をかき、特別に直々にジャンプテストをさせる。 「ただしわたしのたまは、はやいから一きゅうですませてあげる」とトスをあげる。女の子がジャンプする足。そしてキャプテンが「あ!」と驚き、後ろで他の選手も小さく驚いているコマ。次のページは一ページ二段という大胆なコマ割りを使って、なぜか太陽を背に振りかぶっている場面と、「バシッ」と太い効果音を使ってシュートしている場面で「つづく」になる。 感心するのは、「やきゅう王子」からたったいくつかの落書きを挟んで数ページあとのこのマンガで、「私」は数段の成長を遂げていることである。 ちゃんと起承転結の「起」が描けていること。 目の描き方が少女マンガみたいな星いっぱいではなくて、意思のある瞳に変わっていること。 感情の表現にバリエーションがあること。 コマ割りにメリハリがあること。 そのあと春になって小学校3年と4年の両方の記入があるマンガノートに、その続きが描かれている。驚いたことに「巨だん10ページ」と銘打って長編に変貌し、なおかつ同じノートの最後にもう一度3ページの続きを描いているのである。 続きを見て見よう。 キャプテン「あれは中村キャプテンの魔球だ‼」 選手「え‼」 主人公「こんなにおどろくところをみると、ねえさんはすごいせんしゅだったんだな」 選手(北川)「じゃあんたは中村さんの…」 主人公(中村)「そう、あねのいもうと中村とも子です。よろしく。それであんたは?」 北川「わたしはエースの北川です」 主人公「まあ、あなたが」(目のみの表現) 主人公「あねからよくいわされて(ママ)いますよ、エスファイターにはけたはずれのすごい人がいるって。その名前は北川だって」 北川「まあ‼」(ポーと頬を染める) 主人公「がんばりましょう‼」 北川「ええ!」 キャプテン「おいわいにわたしからプレゼントをするわ」 「これは星マークで、キャプテンをゆずるしるしだよ」 主人公「え!」 北川「おめでとう」 おいおい、新入部員にキャプテンを譲っちゃったよ!こういう理不尽な展開も、私家版マンガの宿命なのだろうか。ただ、ここで書き出したセリフは冒頭の一ページで全部済ませているのだ。ここで、このチームの関係がハッキリし、なおかつこの下のページにつながっているのだが、ひたすら「アクション場面」に移るのである。あ、あともう一人美少女が新入部員として入る場面がある。3人ではバレーボールとして弱いと思ったのだろう。 しかし、「血のにじむような練習」の描写の的確なこと。中村とも子は、あっという間にキャプテンになってしまっている。 5P目からは、実況アナウンサーが「おに(鬼)になり過ぎている」というほどのエスファイターたちの容貌が変化して、第一試合が始まる。中村とも子は、相手のキャプテンが放つ魔球を既によんでいた。それはS字に曲がる魔球だった。一ページを使ってそれを描き、ここで「つづく」となる。 ところが、ノートの後ろで再び始まった「青空へアタック」は、中村とも子と美少女新入部員が同時にアタックしている明るい表紙で始まっている。始まると、敵キャプテンは「あ」と叫び、S字魔球はらせん状に曲がる魔球として返され、キャプテンの頬を直撃して救急車で運ばれてしまう。そしてこんなト書きが入るのである。 「けがは一日でもとどうりになったが、あの二人はあのわざをにどとつかわないことにした。しかし、このわざをつかっているほかの二人がいる。それは、」 「水野きょうだいだった」と書いて二人の新しいキャラの顔が出てきて「つづく」となる。 直ぐわかるように、話の展開だけは「アタックNO1」のパクリである。しかし一挙に表紙を含めて15Pも描いている事に、私はビックリした。 ここで、徹底しているのは、ともかく「盛り上げた上で、つづきに持って行く」という作劇方法が既に完成しているということだ。 「青空へアタック」とほぼ同時期に描かれていると思うのが最初四冊あったノートの写真で極東ノートに何人かのマンガキャラがついていたノートがある。そこには特別11ページと銘打って「アタックコンビ青空」という作品が描かれていた。これは「青空へアタック」の前日潭で、中村とも子のお姉さんが敵の魔球に目を潰されて救急車で運ばれるところから始まるのである。だから話の構造は「青空へアタック」とまったく同じである。しかし、ほんの少し変えている。それはラストの描き方である。なぜかとも子はすぐに敵に仕返しの球を返して、相手キャプテンも救急車で運ばれる。とも子は、「だがなぜかうれしくはなかった」とト書きが呟き、汗のような涙のような水玉が三コマにわたって落ちてゆき「な」「に」「か…!」とト書きが描かれて「つづく」となるのである。 「勝利のあとの虚しさ」の表現に挑戦していることで、注目出来る。 「私」は、マンガを描き始めて半年ぐらいの間に、実に成長(試行錯誤)しているようだ。それを今度は「ほうたいレスラーかげ」を元に語ってみよう。

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