6851127 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

再出発日記

再出発日記

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

フリーページ

カテゴリ

お気に入りブログ

プリシラ★プレスリー… New! 天地 はるなさん

徘徊日記 2024年4月… New! シマクマ君さん

緑の村マンション滞… New! はんらさん

韓国旅行2024春旅2… New! suzu1318さん

高齢化の中の高齢化 New! 七詩さん

カレンダー

2016年04月01日
XML
テーマ:本日の1冊(3685)

「100のモノが語る世界の歴史2」ニール・マクレガー 筑摩選書

大英博物館の企画展を側面から説明する選書の第二弾である。遺物によって、その時代の深い物語を取り上げ、結果的に世界の歴史を語るという試みに私は賛成する。ここに選ばれている遺物は、何も説明されずに視れば単なる硬貨や絵皿や壺や瓦、像に過ぎない。現代の美術家でも作れそうなものも少なくはない。しかし、大英博物館というの世界最高峰の学芸員たちの語る物語を経ると、その遺物は忽ちに人類の思想と美意識が創った歴史の貴重な足跡に見えるだろう。第一巻と同じように、私は私の問題意識に沿って、35の遺物の中からたった3つだけを選んで、その感想を述べたい。

201604011118_8946_iphone.jpg
漢代中国の漆器。(北朝鮮、平壌の近くで出土した漆塗りの杯。西暦4年)
楽浪郡の出土品だ。司馬遷「史記」の時代、漢の皇帝武帝は紀元前108年に北朝鮮のあたりまで領土を広げ衛氏朝鮮を滅ぼして楽浪郡を初めとする漢四郡を朝鮮に置いた。それから100年が経った。これは前漢の終わりの頃に太守への贈り物としては当時の最高級品だった。どこが最高級品か。日本の漆器もそうであるが、本物は30回以上の塗り重ね、乾燥と硬化のための待ち時間等々で完成までに一か月以上のの時間と手間がいる。マクレガーはこれ一つで青銅の杯10個は買えただろうという。この当時、漢王朝は文字通り世界で一二を争う国だった。人口調査までしている。5767万1400人だったという。最もすごいのは、杯の底の周囲の帯に「銘」がある。そこには、製造工程の6人の職人、そしてなんと製品検査官の7人の名前がかかれているのだ。すなわちこうだ。「木の心材は○、上塗りは當、耳の持ち手の金張りは古、絵付けは定、最終研磨は豊、製品検査は宗、責任者は政府監督長の章、管理責任者の良、補佐官の鳳、その部下の執行官の隆、および事務長の褒である」当時日本は弥生時代中期、まだ大きな王墓は出現していない。青銅器時代が終わりに近づいていたころだ。漆器はあった。日本の漆器職人が中国に出向けば、すぐに職人になれただろう。しかし、この検査に7人もの人間を記録するような官僚体制を作るのには、それからさらに600年も必要としたのである。今気が付いたのだが、それは日本が製鉄を導入するのと同じくらいの年月を必要としたということになる。

201604011118_9596_iphone.jpg
ウォレン・カップ(エルサレムに近いビテールで出土されたとされる器。西暦5-15年)
漢代の漆器とほぼ同じ時に、遠く反対側の国で一つの銀器が作られていた。問題は器を作る技術ではない。そこに描かれていた「こと」である。
この器には、成人男性と思春期の少年との間の性の行為の場面が描かれている。このゴブレットの技術もすごい。内側からの叩き出しで模様を作っている。パーティー用の器であり、その場にいるすべての人々の称賛を得るために作られたものであることは論を待たない。パーティーには一般的に男だけが出席する。ここに描かれているのは、ローマ人から見たギリシャ世界の性愛の姿ではある。我々が江戸時代の歌麿の春画を鑑賞するようなものだ。理想化されてはいるが、大っぴらに認められてはいない。それを象徴するのが、隅に描かれている奴隷が二人の姿を盗み見する姿である(写真の右隅を見てほしい。)。この当時の社会に対する相対的なものの見方の「成熟さ」を、私は驚きをもって見ている。

最後は唯一紹介されている日本の遺物を取り上げる。

201604011118_6088_iphone.jpg
時代はぐっとさがって平安時代、鏡である。西暦1100-1200年。
弥生時代に日本にもたらされた鏡は、この時代もいまだ青銅を磨いてその研磨された表面に映る機能で鏡の代わりにしている時代だった。しかし卑弥呼の鏡から約1000年後、裏の模様は極めて日本的なものに変貌した。飛翔する二羽の鶴というモチーフは極めて日本的であり、その流れる意匠は極めて独特である。また、長寿を願う祈りも込められている。この鏡が発見されたのは東北の出羽神社の池の中だった。平安貴族の娘が要らなくなった鏡を修験者に依頼して来世を願って投げ入れさせたものだろうということである。こにもやはり小さな「物語」がある。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016年04月01日 11時28分05秒
コメント(0) | コメントを書く
[読書(ノンフィクション12~)] カテゴリの最新記事


キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?
ポンボ@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) お元気ですか? 心配致しております。 お…
むちゃばあ@ Re:そのとき 小森香子詩選集(08/11) はじめまして むちゃばあと申します 昨日…
KUMA0504@ Re[1]:書評「どっちがどっち まぎらわしい生きものたち」(02/26) はんらさんへ 今気がつきました。ごめんな…

バックナンバー

・2024年04月
・2024年03月
・2024年02月
・2024年01月
・2023年12月
・2023年11月
・2023年10月
・2023年09月

© Rakuten Group, Inc.