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2016年06月11日
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テーマ:本日の1冊(3685)
バラカ.jpg
「バラカ」桐野夏生 集英社

「福島原発事故独立検証委員会調査検証報告書」にはこんな記述がある。「官邸中枢スタッフは我々のインタビューの中で「この国にはやっぱり神様がついていると心から思った」と思わず漏らしたものである」。言うまでもなく、小説の中の話ではない。いま日本国民は既に忘れてオリンピックに浮かれているのかもしれないが、あの福島原発はすんでの処で四基とも爆発するところだったし、爆発の時にたまたま風向きが海に向かっていたので最悪の事態を免れたのである。

「バラカ」は福島原発事故の時に四基とも爆発して、首都が大阪に移転した日本の近未来を描いている。この小説はだから、空想物語ではない。(いま現在もいつ起きてもおかしくはない)原発事故の起こすさまざまなドラマの可能性を提示する小説である。

しかし、それだけではない。「OUT」や「東京島」の登場人物たちのダークサイドに堕ちてゆく描写が素晴らしかったように、桐野夏生らしく、震災前の東京在住の三人の都会派男女と、群馬に住んでいた南米系日本人三人の男女を描いて、バラカがいかにしてドバイの子供市場で売られてバラカとして日本の被災した子供として生まれ直したか、を丁寧に描く。そして人間の闇と可能性を浮き彫りにしようと努力している。

とんでもない状況で産まれたのにもかかわらず、甲状腺ガンで首の周りに手術跡がネックレスのようについているのにもかかわらず、震災8年後の10歳のバラカが、聡明で正義感溢れ、前向きな少女になったのは、ひとえに彼女を育てた人たちが素晴らしかったからだと思う。震災後の夏、警戒区域の放置犬を保護する目的で入った四人の「爺さん決死隊」の男たち。彼らの知恵と明るさと、良心がなければ、ネットや監視カメラや独裁政権の中で、密かに殺されて交通事故で処理されてしまう未来もあったかもしれない。「近未来」というSF的な表現でいいのか、という感想も持ちつつ、去年の北野慶「亡国記」に続いて、こういう「原発事故小説」が再び誕生したことを祝福したい。





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最終更新日  2016年06月11日 14時59分54秒
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