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再出発日記

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2016年07月03日
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テーマ:本日の1冊(3685)
介護民俗へようこそ.jpg
「介護民俗学へようこそ! 「すまいるほーむ」の物語」六車由美 新潮社

「驚きの介護民俗学」で心底驚いて、この本を手にとった。前著では、私が昔サークルでやっていた民俗学のことも思い出し「こんなところに思いも掛けない宝庫がある」という発見としての感想の方が大きかった。

今回は反対に、現在私が少しだけ関わっている仕事としての介護についてや、この数年の間に体験して来た父親や伯母夫婦の介護のあり方について思い出すことも多かった。

それは著者の境遇の変化からも起きていると思う。著者が理解のある経営者に支えられた小規模デイサービス施設の管理者に変わったのだ。それにより、より利用者に寄り添った「お仕事物語」になっていたように感じた。反対に言えば、前著は仕事面では融通が効かなかったからこそ、より民俗学的にシフトした内容になったのだろう。介護民俗学という学問がもしありうるとすれば、どう実践していけば利用者との関係性を持てるのか、ここには豊かな経験が書かれているだろう。

もちろん、民俗学的に貴重な事例もその中で発掘される。完全に日本化されていた戦前のソウルの暮らし、女子勤労挺身隊の実態、風船爆弾の作成途中で遊んでいた経験、高度成長期の最初期の恋バナ、沼津という比較的開かれた地方の村の青年部の新婚世帯の覗き、昔話の語りの原風景ともいうべき認知症の方の怪談話、等々。

著者は、これらを本格的な「聞き書き」だけでなく、送り迎えや入浴介助の中で聴き取り文章化している。また、利用者全員がそのことを良しとして、彼女の文章を積極的に読んで感想を言いあったりしている。こういう「関係性」こそが、一般のノンフィクションジャーナルとは違う正に「民俗学的」なのだと思う。だからこそ、一般のデイケアサービスで取り入れるのは、なかなかむつかしい。

でも、広まって欲しいと切実に思う。なぜならば、10人ほどが利用する著者の小規模施設でもこんな豊かな事例が出てくる。全国的に始まれば、いま急速に無くなりつつある「高度成長期以前」の、もしかしたら弥生時代まで射程に入るような日本人の貴重な「民俗」(私の個人的見解です)を記録できるかもしれないのである。

しかし、それだけではない。「要介護状態となった人たちもひとりの人間として地域において価値を持ち、要介護状態の人もそうでない人も互いに支え合って地域社会を形作っていく」ちょっと前の村々では当然あった人びとの暮らしを取り戻す、きっかけになるのかもしれないのである。

やはりこの本も「驚き」でした。

2016年7月3日読了




produced by 「13日の水曜日」碧猫さん

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最終更新日  2016年07月03日 22時31分29秒
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