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テーマ:本日の1冊(3685)
カテゴリ:読書フィクション(12~)
「イーハトーヴ探偵 賢治の推理手帳1」鏑木蓮 光文社文庫 推理小説はふたつの効用がある。一つは、頭の体操のクイズ雑誌が根強く売れるように、娯楽として大きな需要があるので利益が見込めるということだ。一つは、犯人を特定するためにはその周りの風俗・社会状況を詳しく描かなければならないから、対象の周りに興味のある読者ならば格好の解説書になるということだ。 世の中に宮澤賢治ファンは多い。かくいう私も、もう既に45年来のファンである。岡山の地から既に二回も賢治を慕って花巻を旅したし、一回は偶然、賢治の旧居前で弟の宮澤清六さんと言葉を交わしたことさえある。 だからこそ、こういう小説には惹かれてしまうと同時に、悪態をつかざるを得ない。 時代はまだ賢治が農学校の教師をしていた頃であり、素封家の家の恩恵を受けながらも嫌っていた時である。友人の藤原嘉藤治をワトソンにして、ホームズのように推理をする。私も泊まったことのある大沢温泉の混浴川風呂から見えた河童の話を見事に推理してゆく。いろんな細かい描写が、あゝ大正11年の花巻はこうだったに違いないと思わせてくれて、嬉しくなる。賢治と父親との微妙な関係にも異論はない。しかし、やはりどうしても賢治が殺人事件に首を突っ込むような、こんな大変なことに二度も三度も入ってゆくのが違和感あってたまらない。いくら、そこから派生した詩や短歌が、それとなく提出されようとも、賢治の作品にこれらの事件が大きく影響されなかったはずはないからだ。事件はフィクションだよと、言われようとも、賢治ファンとしては、作品を穢されたようで、やはり我慢出来ないのである。 そういう意味では、殺人事件にもならない第一章と四章、特に一章は、良くで来ていたと思う。ただ、正直続編は読みたくはない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年09月13日 14時43分27秒
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