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カテゴリ:読書フィクション(12~)
「ゼツメツ少年」重松清 新潮文庫 この文庫本も「文庫本のためのあとがき」がついていて「解説」はない。だから、ここに登場するエミさんもツカモトさんも、ナイフさんも、マユミという女の子も、初老の男性数人も、草野心平詩集を読んでいた中年男も、野球帽を目深にかぶった少年も、かつての重松清の小説の登場人物らしいのだが、特定してはくれない。重松清はずっと文庫本解説を拒んでいて、そういう訳知り顔の「解説」が嫌なんだろうと思うから、私も「特定」はしない。 年に一冊以上は重松清を読むことにしている。昔は九割型読んでいたが、途中で追いつかなくなって諦めた。でも、今回登場した人物たちは昔の作品が多かったので、正直嬉しかった。 そんな中に、タケシとリュウとジュンという「ワケあり登場人物たち」が新たに登場して来て、物語をセンセイと一緒に作り始める。途中で真由美という女の子も出て来て、話の筋は複雑になるけど、かえってスッキリし始めるのが不思議だった。 私のスマホで「ゼツメツ」って書くと、最初から三番目に「絶滅危惧種」が登場する。絶滅危惧種たちは、自殺しない。けれども、とんでもないところまで追い詰められているんだよ、とタケシやジュンは私に教えてくれた。「想像力が大事なんだよ」。昔、重松清を読み始めたころから云えば、追い詰められる子供たちの事情はどんどん酷くなってきた。あんなに高度な追い詰め方は、私の「昔」にはなかったと思う。 夏休みが終わる頃に、そして終わった後に、今年も、いく人かの悲しい出来事があった。その数万倍もの、追い詰められたゼツメツ少年たちが、今もテーチス海の海岸をさまよっている。私に、子供たちとの接点はない。けれども、偶然、霊園や駅前やコンビニ前で出会ったならば、絶滅危惧種には気がつくことができるように、今から想像力を鍛えておこうと思う。 2016年9月20日読了 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年09月21日 18時20分52秒
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