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再出発日記

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2016年12月12日
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カテゴリ:旅の記録


江波気象館をあとにして山を下り、路地裏に入った。目的は手に入れた「江波散策コース」の中に書いていた「鏝(こて)絵」を見ることである。鏝絵とは、日本で発展した漆喰を用いて作られるレリーフのことである。 左官職人がこて(左官ごて)で仕上げていくことから名がついた。題材は福を招く物語、 花鳥風月が中心であり、着色された漆喰を用いて極彩色で表現される(Wikipediaより)。前に左官のまねごとをしていた時期があったので、一度本物を見たかったのだ。

港町特有の狭く入り組んだ路地裏から、アバウトな地図をたよりにしばらくうろついたのだが、どうしてもそれらしき場所に行かない。公園で子供を遊ばせているお母さんに、「江波保育園のちょっと東のあたりはどこですか」と聞くと、全く見当違いの場所を歩いているのが判明。やっとそれらしき場所(それはなんと最初の入った路地裏だった)に来ても、鏝絵が見つからない。ダメもとでその土地の人たちに「鏝絵をしっているか」と三人ぐらいに聞いたが、土地の人も知らない。弥生遺跡と全く同じ構図だ。土地の人は案外自分の周りに貴重な芸術品があるのを知らないのである。どちらにせよ、普通の家ではなく、漆喰の家にあるのは確かだ。数少ないそんな家を見つけることにした。

もしかしたらこれか?これなのか?私には家紋の上にもともと予定されていた意匠にしか思えない。しかし、アバウトな地図はこの家だとどう考えても示しているし、外から見る限りではこれにしか思えない。いちおうこれだと諦めて帰途につくことにした。これが本来の鏝絵だとは思いたくない。また、どこかでリベンジを期したい。本当はお昼前に広島の街に帰る予定だったのだが、昼を過ぎてしまった。

江波電停に帰る途中、普通の家の壁に「この世界の片隅に」のポスターではなく、チラシが貼ってあった。その時はさすが地元広島だ、と思っただけなのですが、後でわかったのはこの辺りがすずさんの実家があった「地区」だったのです。

電鉄で帰る途中、車窓から原爆ドームを写す。この橋の上ですずさんは「人攫い」と出会い、別れ、周作さんと出会ったのである。

本当はこの町で、「聖の青春」を観るつもりだった。しかし、急きょ、「この世界の片隅に」を観ることにした。広島を代表する映画館、八丁座のこの作品の反応を急に観たくなって、二回目の鑑賞をすることに決めた。そうと決まれば昼飯を食べなくてはならない。商店街を歩いて定食屋に入って生姜焼き定食650円を頼む。

店に掲げているこのポスター、私はカープファンでは全くないけれども、まだ広島の「赤い興奮」は全然冷めていないとひしひしと感じた。

福屋百貨店の八階にある八丁座で当日チケットを買う。会員ではないけれども、今日は12月1日、1100円で買うことができる。もしかしたら満員で断れられることも覚悟していたが、すんなり買えた。私は岡山ならばいざしらず、広島ならば連日満員ではないかと思っていたのだが、劇場に入ると八割がたの入りだった。もちろん多いとは思う。しかし、八丁座なのだ。ここの座席は2000円の価値があると有名なのである。それなのに、満員にならない。少し意外な感じがした。

これが八丁座だ。

豪華なフランス製の座椅子。ゆったりとした席の間隔。

お弁当やコーヒーも、ゆっくりといただくことができる。本当に一流劇場の感覚なのである。これで定価で映画を観れる。

さて、映画が始まった。また、月の映画まとめにも書くけど、特別ここにも感想を載せよう。

「この世界の片隅に」二回目鑑賞
広島の八丁座は八割がた埋まっていた。映画の日の平日午後。地方ではそんなものかもしれないが、ここは地元の広島、しかも老舗の八丁座なのだ。少し意外な気がした。客層は正に老若男女だった。終わったあと、みんなあまり泣いていなかった。もちろん、無理やり泣かすような作品ではなかったものの、広島の人たちには特別な感慨を起こさせるのではないかと思っていたので、それも意外だった。老齢の女性が眼鏡の奥の涙を拭いていた。

改めて傑作だと思う。どこまで歴史考証を重ねたのかは、例えはすずの実家の江波の海岸から広島地方気象台が小さく見えていた事からも推察出来る。私は当日そうとは知らずにその辺りを歩いていた。正に海岸線から見える当時の景色そのままだっただろう。一事が万事、実に細かいところまで、当時の景色を再現しているのだ。ところが、絵柄は厳しい写実性を持っていない。終始淡い絵の具のような絵であって、この作品世界すべてが、いま生きているならば90歳くらいになっているに違いないすずおばあさんの夢の中の思い出のように思える。だから、ところどころ爆発は綺麗な具材を使って描かれるし、大切なものを失くしたときは、極端な抽象絵画になる。「君の名は。」のように、脚本的な派手な仕掛けやPOPな音楽を採用しなかったし、「聲の形」やジブリ映画のような顔の表情の細かな演出はない。しかし、大人の教養に裏打ちされた骨太の脚本と、絵のタッチそのものが雄弁に語る日本セルアニメの到達点が、ここにあった。そして、のんの声の演技が細かい表情をサポートしていた。

一回目のときはクラウドファンディングのリストを追うので精一杯だったので、その下のラフ絵は見る事ができなかった。今回じっくり見て、遊女のおりんさんの半生だと知れた。原作にはない背景も知る事が出来て良かった。

白いタンポポの群の中に、一つ旅して根付いた黄色のタンポポのように、「普通に」「この世界の片隅に」すずは生きてゆく。

2016年12月1日
広島・八丁座
★★★★☆




当然、監督も、のんさんも、原作者のこうの史代さんも来ていた。



地元らしく、どの絵がどの地域に対応するのか展示がされていた。ところが、後でわかるのだが、こんなのはほんの一部で、このアニメはほとんど博物館なみにありとあらゆる場面が当時そのままなのだ。

本当はこの旅の記録は「2」で終わらすつもりだったのだけど、長くなったので、ここで切ります。






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最終更新日  2016年12月12日 18時48分55秒
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