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2017年05月24日
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「裁判の非情と人情」原田國男 岩波新書


広報誌「図書」に約3年間連載されていたエッセイをまとめたもの。有罪率99%と言われる刑事裁判で20件以上の無罪判決を言い渡した元東京高裁判事の、一般には知られていない裁判官の仕事、生活、信条を述べる。

久しぶりに「参考になった」線をたくさん引いた。裁判官が関わらない人生の三大運動は、労働運動と学生運動と選挙運動らしい(私は全て関わった)。その他、裁判官の不足している部分を、原田氏は非情に鋭く意識している。それは、短期間だけど米国留学、新聞記者研修、弁護士経験などを経験し、きちんと自分の血と肉として咀嚼している著者だから出来る事なのだろう。だから、法ではなく人情を重視する藤沢周平や鬼平などを愛読書であると公言し、重要判決の前日には藤沢周平を再読すると、告白したり出来るのである。

エッセイということもあって、裁判制度の批判はかなり緩やかになっている。多くは(悪い部分はあってもそうではないことを)「信じたい」という風に結ばれている。法律家だから、そういう表現になるのだ。正面から批判しようとすれば、延々と長い「論文」にならざるを得ない、と自らを律しているからだろう。だからこそ、ソフトな言い方で述べられている裁判制度の負の部分は説得力があると、私は思う。

曰く、
「刑事裁判官は、微妙であると何かと悩んで検察寄りの判断にコミットする傾向がある」(48p)
「裁判官に合理的疑いを超えるとの心証を得させなければ、検察官は立証を尽くしたとは言えないから、無罪にすればよいのである。最近、原子力発電所の運転差止めの仮処分をめぐって、裁判官は原子力のことはわからないのだから、専門家の意見に従うべきだという論調もみられるが、前記の観点からすれば、この見解には疑問がある」(60p)
「勇気がいるというのは、無罪判決を続出すると、出世に影響して、場合によれば、転勤させられたり、刑事事件から外されたりするのではないかということであろう。これも、残念ながら事実である」(82p)
「刑事裁判における上記の不正議(冤罪事件のこと)について、法務検察と裁判所において、再発防止策を具体的に検討したふしはない。それどころか、そのような検討すら、司法権の独立に反するといわんばかりである。しかし、司法権の独立は、当然ながら、自浄作用を前提とする。司法権の内部で、自らの判断で問題点を解決するから、他の二権(国会、内閣)による介入を拒否することができるのである。それをしないでおいて、裁判干渉のみを批判する資格はないように思われる」(95p)
「(2016年刑事訴訟法改正は)可視化をある程度認める代わりに、捜査権の強化を図ることが真の狙いであったのだろう。どだい、冤罪防止という観点は最初からなかったとすらいえる」(168p)

まだだくさんの論点を示していたが、長くなるのでここまでとする。

2017年5月19日読了





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最終更新日  2017年05月24日 18時23分21秒
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