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カテゴリ:読書(ノンフィクション12~)
「〆切本」左右社編集 私は〆切に興味があった。なぜならば、常に〆切に苦しめられているし、一方では大量の文章を日々生産しているからである。 もちろん私は作家ではない。しがない普通のブロガーに過ぎない。それでも、この12年間、だいたい800字から1600字ぐらいまでの駄文(原稿用紙2-4枚)を書き続けて、ネタが尽きた事がない。ブログ記入率はこの8年間75%で一定しているから、一週間に6ー5日は書いている事になる。そんな文章家ならば、この本の中の郷土大作家・内田百間の様に、〆切すぎて書けないで年越しをするようなことがなかったかというと、ほぼ毎月その苦しみを味わっていると告白する私がいる。 私は素人ながら、地域サークルの会報を二ヶ月に一度つくり、地域労組機関紙の映画欄に連載を持っている。この二つが、常に〆切ギリギリか、〆切を越さないと完成しないのである。 あの木下順二が、仕事にかかる前になんと「馬書」を読み込み、情報カードを生産し、それがおそらく万の数ほどつくっているというのを読んで、「あゝ同類がいる」と安心する。 神様の手塚治虫の様子は、とても参考にはならないけれども、「遅筆堂」というあだ名を敬意を持って私も拝借している井上ひさし名人のエピソードは、私にはとっても癒しになる。今回のエピソードは、今まで読んだことのないものだった。少しメモする。 ◯缶詰病の潜伏期間は次の等式で表される。(原稿用紙枚数の二乗×締切日までの残り日数×作物に対する患者の意気込み×原稿料或いは報酬)÷編集者の原稿取立ての巧拙。 ◯発病症状は初期が躁状態。中期は、睡眠を貪る。その次は、放浪癖。◯◯の目を盗んで盛り場をうろつく、要らないものを買う、映画を観て回る。最終局面、自信喪失の極に達し「次号回しにしてください」「殺してください」という。この場合、編集者はその願いを聞き入れてはならない。なぜならば、この病は「とにかく書かなければ治らない」から。 ◯井上名人は、末期症状の患者を缶詰状態にすると、奇妙なことに「ほとんどの患者が自力で立ち直る」と書いている。しかし、これは症状がまだ慢性化していなかった頃の文章だと思われる。患者(井上ひさし)はその後、大穴を何度も開けるからである。 川本三郎が天使のような編集者のことを書いていれば、元編集者の高田宏が編集者泣かせのクズ作家について書いている。 私には潜伏期間はない。私に編集者はいない代わりに報酬もゼロなので、ゼロ×全ての数字でゼロなのである。そして、なんの因果か、年に7回くらいは「完徹」をしても出来ないで〆切という「デッドライン」をやすやすと超えるのだ。 2017年6月5日読了 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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とは言え、〆切がなければ書けないものです。
(2017年06月06日 06時20分15秒)
Mドングリさん
>〆切のある連載記事が二つ、しかも無償ですか・・・ >好きなんでしょうけど、たいへんですね♪ > >その合間に、月に10本ほどの映画鑑賞があるし・・・ ----- 映画だけでなく、10冊ほどの読書も(^_^;)。 私にとっての「馬書」は、最近はAKBのYouTubeです。最近AKBは「SHOW ROOM」という、グダグダの個人発信動画を発信していて、りりほんのそれを観ていたら、この5日間で映画評を書くのに、書けないままであっという間に4日を過ごしていました。しかしながら、今回は奇跡的に〆切に間に合いました(^-^)/。 (2017年06月06日 07時24分11秒)
ももたろうサブライさん
>とは言え、〆切がなければ書けないものです。 ----- 県労会議の映画評は、確かに〆切があるから練られたものが書けている気がします。ブログは、上手く書けた時と書けない時の差がある。 今回の映画評は実は「クリーピー偽りの隣人」です。毎回、もう一度作品を見直して書くのです。今回もDVD借りてはいたのですが、あまりにもおぞましくて、もう一度観る勇気が持てなくて、そのまま書いて出稿してしまいました。まあ、今回の文章の「肝」は、映画の細かい内容よりも、その背景なので、良かったんだと今は思います。 〆切は英訳するとデッドラインと言うそうです。村上春樹は〆切は絶対守るそうです。ももたろうサブライさんはそのタイプのような気がします。私は井上ひさしタイプです。ホントに本格〆切が来たら、死んでしまいます( ̄ー ̄)。 (2017年06月06日 07時35分31秒)
KUMA0504さん
>〆切は英訳するとデッドラインと言うそうです。村上春樹は〆切は絶対守るそうです。ももたろうサブライさんはそのタイプのような気がします。私は井上ひさしタイプです。ホントに本格〆切が来たら、死んでしまいます( ̄ー ̄)。 ----- 〆切を守るというより、そこで見切りをつけるタイプです。 手もとにあるといくらでも手を入れたくなるから、キリがないんです。 (2017年06月06日 12時47分15秒)
ももたろうサブライさん
>KUMA0504さん >>〆切は英訳するとデッドラインと言うそうです。村上春樹は〆切は絶対守るそうです。ももたろうサブライさんはそのタイプのような気がします。私は井上ひさしタイプです。ホントに本格〆切が来たら、死んでしまいます( ̄ー ̄)。 >----- >〆切を守るというより、そこで見切りをつけるタイプです。 >手もとにあるといくらでも手を入れたくなるから、キリがないんです。 ----- この本は、〆切を守る少数の作家と、〆切を守れなかった多数の作家の文章のアンソロジーなのですが、そうなるとどうしてもももたろうサプライさんは前者ということになります。 まあ、だから偉いとは単純には言わないので安心して(^^;)ください。 一番ひどい例で、一番最後のページに、柴田錬三郎がプレイボーイ誌で時代小説の連載をおとしたときに、連載のページ(おそらく4p分ぐらい)をまるまる「落としたことのお詫びと言い訳」で埋めた文章が載りました。おそらく差し替えも無理だったんでしょう。「これが初めてで、一回こっきり」と約束しているのですが、どうだったんでしょうか。 (2017年06月06日 14時15分48秒) |
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