|
テーマ:映画館で観た映画(8349)
カテゴリ:洋画(12~)
「シン・ゴジラ」 昨年度マイベストワンの作品です。ゴジラ映画の伝統を活かしつつも、大地震や原発事故を想起させる新たな性格を付与し、虚構(ゴジラ)と現実(ニッポン)を対比させながら、ポリティカル•怪獣エンタメ映画を描き切った傑作です。 もちろん幾つかの批判も聞いています。 一つは、政治ストーリーになっていて、人間ドラマがなかったのではないか。 一つは、自衛隊の活躍が全面的に出ていて、自衛隊宣伝映画になっているのではないか。 二つの指摘は、それぞれもっともだと私も思いますが、反論してみましょう。 アメリカのゴジラ映画は、必ず家族か恋愛話を無理やりこじつけますが、庵野秀明監督は、見事にそれらをそぎ落としました。平成ゴジラやミレニアムシリーズは、様々な首相が出ていましたが、途中でゴジラに殺される首相(大杉漣)は、今回が初めてです。主人公2人(長谷川博己と石原さとみ)は、むしろ狂言回し的な役割です。「真」の主人公は、「神」のようにミステリアスであり、全く想像もつかなかった造形と能力で登場した「新しい」ゴジラでした。人間ドラマなどを挿入していれば、かえってこの魅力が削がれていたでしょう。もちろんドラマ不在ということは、役者の演技力が無いということではありません。例えば、首都を破壊された直後の高橋一生のわずかな涙を潤ませた表情が、庶民の大きな悲劇を想像させるものになっていました。 今回は、自衛隊全面協力のもとに作られました。自衛隊には実は協力体制の基準が存在します。面白いのは、単なるプロパガンダ映画のみに協力をしていないのです(「自衛隊色を表面に出さず」という基準さえあります)。それは、作品の完成度がなければそもそも宣伝になり得ない反省から来ているというのです。その意味では、今回の自衛隊登場シーンは、今まで怪獣映画では観たことのないリアルさがありました。知っていますか?自衛隊の出演は、実は無料貸し出しなのです。自衛隊員にとっては、ゴジラ映画出演は「聖戦」だと聞いたことがあります。何故ならば、具体的な国を攻撃することなく、純粋に戦うことができる唯一の自衛戦争だからです。そしてネタバレになるので具体的に書けないのですが、私は、今回は国民と自衛隊とが協力した、最も理想的な防衛戦になっていたと思っています。 ただし、仮死状態にあると思われるゴジラの続編を絶対作ってはいけない、庵野監督は監督を引き受けてはいけないし、原作権も譲渡してはいけない、というのが私の意見です。理由を展開すると長くなるなるので、この辺りで。(2016年作品レンタル可能) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[洋画(12~)] カテゴリの最新記事
Darling chokoboさんへ
始めまして。 私の周りでは案外この作品評判良くないということを最近わかりました。 Kさんからは「この映画評が届く直前に観た。気持ち悪い造形に引いた。こっちを先に読んでおけばよかった。もう気持ちは、変わらない」と言われました。私は(エヴァの)庵野だから仕方ないよね、と思ったのだけど、確かに普通の人はそうは思わない。あの造形には、私が展開出来なかった「ゴジラ細胞とは何か。どういう意味があり、これからどういう展開しかあり得ないか」という長編論評が背景として存在するのですが、そういうことは、少なくとも1000字以上の言葉が必要なのだ、とても説明しきれない。 (2017年07月21日 00時14分35秒) |
|