「平和新聞3月15日号」1面に、「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」発起人の1人、内田樹氏のインタビューが載っている。安倍自民党は、年内の改憲発議の企みをいささかも緩めてはいない、とわたしは思う。3000万人署名の趨勢は、この日本の未来を左右するだろうと、わたしは思う。署名の発起人・内田樹氏は、大事な「論点」について語っている。その要旨(と言いながら、あまりまとめ過ぎると大切な点が抜けるので少し詳しく載せる)を述べて、わたしの感想を付ける。
改憲論の特徴は以下の点である。
◯今後の国家戦略にビジョンが何もない。2012年の憲法草案にあるのは、「俺たちはこの国の権力を半永久的に独占して、国民を従わせたい」これだけ。これほど志の低い憲法草案は見たことがない。憲法論議は、本来我が国の未来像を提示するもの。現状と条文をすり合わせるだけの改憲論には、未来志向の要素のかけらもない。
◯この改憲論によって、軍事的な対米従属はさらに深まり、自衛隊は米軍の「二軍」として海外派兵される可能性が高まります。米の兵器産業は、日本を絶好の市場として高額な兵器を大量に売りつけてくるでしょう。改憲によって、米国の産軍協同体は間違いなく大きな利益を得ますし、このスキームを円滑に運営することで飯を食っている日本の「対米従属テクノクラート」たちもその余沢に浴するでしょう。けれども、国際社会で日本がどんなポジションを得るか、と言うような国家戦略議論で言えば、日本とアジア隣邦との友好と信頼が深まることは絶対にありません。
◯改憲論の方が、護憲論よりもリアリティがあるように見えてしまう。何故か?戦中世代は、憲法制定時に憲法制定の主体性を失っていたことは知っていましたが、あえて黙秘しました。その代わり、彼らの生身の戦争体験が、護憲運動のリアリティを担保していた(「おまえは戦争を知らないだけだ」)のである。加害体験も語らなかった。しかし、現在戦中派世代が退陣して、条文と現実の矛盾だけが露呈して来た。今の若者が「9条二項は現実と整合していない」という言い分にあっさり頷くのは、有る意味で当然です。
だから、護憲派の課題は、以下のようになる。
◯護憲派は日本がこれから国際社会でどういうポジションを占めたいのか、明確なメッセージを示す必要がある。
僕は、韓国や台湾やASEAN諸国と連携して、緩やかな共同体をつくることで、米国、中国、ロシアといった覇権主義的な傾向を持った大国から自分たちの主権=自己決定権を守ってゆくというのが、1番堅実な国家戦略だろうと考えています。これが最もリスクが少なく、最も利益が多い。
◯護憲派は、戦中派世代が語り落とした2点、すなわち、戦争の加害体験、戦後にアメリカの「属国」化していった現実などを、世代の責任として語らなければならない。創造的に再構築していくこと。それなしに、護憲論がかつてのような力を取り戻すのはむつかしい。すなわち、戦争や敗戦後の占領の現実、憲法だけではなく日米安保条約や地位協定、その下にある密約群などを白日の下にさらすことで、今日の日本が出来上がっていった過程を明らかにし、もう一度憲法を選びなおす営みが必要です。
以下、わたしの感想。
わたしたちは何をするべきか?3000万人署名を一筆でも多くとることである。それが、現在最高の戦略である。賛否合わせて、出来るだけ多くの人と「会話」をすることだ。わたしは今日現在57筆とっている。少ないのか、多いのかわからない。わたしはわたしのペースで行くしかない。
多くは直ぐに書いてくれるが、中にはもちろん拒否したり、今は書かないという方がいる。なかなかその真意を聞くことが出来ないが、若者が「明確に」拒否する方が多いことから、内田樹氏の言葉には頷くところが多い。
今まできちんと「真意」を聞けたのは、2点。
・中国と北朝鮮の脅威がある以上、武力持つのは当然である。話し合いしか、方針がないというのはおかしい。
・むつかしいことは考えたくない。国民投票になって、判断すればいいのでは。
もちろん、数分間「反論」をさせてもらいましたが、数分間で彼ら、彼女たちの意見を変える力は、わたしにはありませんでした。「話をさせていただきありがとうございました」と快く別れることが出来たと思っています。
内田樹氏の議論の感想を更に言えば、
◯内田氏の国際戦略論は、わたしは頷くところが多い。しかし、護憲派で、この部分ですり合わせが出来ているか、というと正直出来ていない。この部分がやや焦るところだ。
◯戦後日本の「属国」化の歴史を明らかにすること。非常に大切だと思っている。以前、「知ってはいけない 隠された日本支配の構造」(矢部宏治 講談社現代新書)という本の紹介をしたが、あの本にあるように「むつかしいことは考えたくない」人に向かって、寄り添うようにひつこいぐらいの説明が、求められているのだと思う。