再出発日記

2018/04/08(日)22:53

講談社文芸文庫の中から私ならば何を読むか

読書フィクション(12~)(656)

「私の一冊 24人の目利きが選ぶ講談社文芸文庫」講談社文芸文庫編講談社文芸文庫が1988年に創刊されて、今年は30周年らしい。無料の記念誌が置いてあったので読んで見た。表紙の「鯨」は特別らしい。文庫のシンボルマークの鯨は、「水面下の大きさ、知性と優しさ」を象徴するために「尾」しか出していないらしいが、今回1度だけ出した顔を再登場させたらしい。プレミア出るかな(笑)。講談社文芸文庫は、絶版になったような文芸本を再販するもの。よって、普通の文庫本よりも高い。その価値を知る者だけが、読む文庫本である。価値はあるかもしれないが、実は「誰にとっても」あるわけではない。それは、ここに出されたラインナップを見てもわかる。冒頭の村上春樹は「鉄仮面」(ボアゴベ)を推す。簡易版を読んだ人はいるかもしれない。私はディカプリオ主演の映画を観た。でもこの推薦文を読んでも、分厚い上下本を読む気にはならない。村上春樹自身がその荒唐無稽さを強調していて、それを愛してるからだ。ちょっと心惹かれたのは、川端康成の自殺で未完成になった「たんぽぽ」。目の前にいる相手の体が見えなくなる「人体欠視症」を娘に持つ母親と娘の恋人の問答らしい。田中慎弥は「永遠の欠落に支えられた作品」と書いているが、老醜作家の妄想かもしれない。未完成なので、それを証明する手段もない。読む価値はないと思うのだが、心は惹かれるのである。阿川佐和子が吉行淳之介の対談集「やわらかい話」の対談に同席してみたかった、と書いている。お父さん阿川弘之の友だちなので、吉行淳之介自身は旧知の人らしい。その気持ちはよくわかる。一冊だけ、読みたいと思ったのは、「ワインズバーグ・オハイオ」(アンダソン)である。一つの架空の町の様々な人たちの連作短編らしい。主人公を変えて、他の短編にも同じ人が登場する。そういうオムニバス形式小説の嚆矢らしい。最近では伊坂幸太郎が有名だ。昔の山本周五郎「青べか物語」も、この作品に影響されて作られたと聞くから、かなり前の作品らしい。「小説を書くなら、本書のような小説を書きたいと、高校生のころからずっと思っていた。小説家になった今も、思っている。」(27p)と川上弘美が書いている。私も、もし小説を書くならば、そんな小説を書きたい。2018年4月読了

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