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再出発日記

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2018年11月11日
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テーマ:本日の1冊(3685)
カテゴリ:平和運動


「暴力はどこからきたか」山極寿一 NHKブックス

世の中には、幽霊のように何度も出てきては、世の人に呪いをかける「考え」がある。
「殺人は、人類の獣性本能の帰結である。よって、戦争は人間の本能行動であり、無くなることはない」
​とっても厄介なのは、この戦争本能説が中国や北朝鮮脅威論、果ては9条改憲の根拠のひとつになり、我々の未来をも左右しているということだ。​
よって、我々はこういう言説と厳密に相対峙し、批判的に検討し、自らの態度を決定しなくてはいけない。それが現代人としての、大袈裟にいえば務めだと思う。検討すべき問題は三つあるのではないか?
(1)動物が同族同種を殺した場合、それは本能なのか?
(2)チンパンジーやゴリラなどの霊長類と、我々人類は何処が似ていて、何処が違うのか?
(3)同族同種を殺すことと、戦争は同じことなのか?違うとしたら、無くすことができるのか?

この本をたまたま手に取ったのは、著者が2015年の安保「改正案」に明確に反対していたからである。「ゴリラでさえ、平和に交渉する術を知っている」と著者は、確か言っていたと思う。その半年後に2007年発行のこの本に出会い、「はじめに」でこう書いていて私は衝撃を受けた。

ゴリラは弱いもの、小さいものを決していじめない。けんかがあれば第三者が割って入り、先に攻撃した方をいさめ、攻撃された方をかばう。そして、相手を攻撃しても徹底的に追い詰めたりはしない。ましてや、相手を抹殺しようとするほど激しい敵意を見せることはない。敵意を示すのは自分が不当に扱われた時であり、自己主張をした結果それが相手に伝わればそれですむのだ。ここには明らかに人間とは違う敵意の表現がある。(8p)

その背景や理由を、今回じっくりと知ることが出来た。今まで「弥生時代にやっと戦争が始まったのだから(日本列島の人類の歴史を一年間で換算すると大晦日に始まったのだから)、戦争は無くすことができる」佐原真氏のこの指摘だけが、私が考古学を趣味とし、平和運動に向かうモチベーションになっていた。今回それ以上のモチを得ることができた実感を、私は持った。

(1)は、そうではない。ことは「はじめに」で明らかである。

(2)に関しては、かなり専門的になる。この本を読む以外にはない。あえて一言で言えば、著者は「(霊長類と人類との違いは)直立二足歩行と家族である」という。

(3)に関しては、霊長類学者の著者の専門ではないので、人類学の定説を紹介しながら、最終章に著者の見解を書いている。「武器」が人類に戦争を起こさせたわけではない。武器を狩猟に使い始めたのは、40万年前。人類が戦争を始めたのは、9000年前なのである。人間は39万年間という想像出来ないほど長い間、狩猟のための武器を手に入れても戦争は発想しなかった。つい最近の人間だけが始めたのだ。

では「戦争は無くすことができるのか?」少し長いが、著者の主張に大いに同調するので、抜粋しながら書き写すことにする。

(戦争は)家族や小さな共同体の内部でのみ用いられていた分かち合いの精神が、民族の理念として利用されるのである。家族を守るために戦っていた男たちが、同じ精神を持って民族のために戦うことを要求される。食と共同と性のルールによって生まれた愛と奉仕の心は、その力が及ばない領域を支配する者たちによってすりかえられ、戦争へと駆り立てられるのである。(略)この悪循環をどこかで断ち切らなければ、現代の暴力や戦争を止めることは出来ないだろう。
それは人間の持つ能力をもっと活用することだ、と私は思う。人間の社会性を支えている根本的な特徴とは、育児の共同、食の公開と共食、インセストの禁止、対面コミニュケーション、第三者の仲裁、言語を用いた会話、音楽を通した感情の共有、などである。霊長類から受け継ぎ、それを独自の形に発展させたこれらの能力を用いて、人類は分かち合う社会をつくった。それは決して権力者を生み出さない共同体だったはずだ。われわれはもう一度この共同体から出発し、上からではなく、下から組み上げる社会を作っていかねばならない。(227p)





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最終更新日  2018年11月11日 10時14分19秒
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