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2019年01月25日
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「万葉集から古代を読みとく」上野誠 ちくま新書


万葉言葉から、(私の関心領域である)弥生時代まで遡る「古代」を読み解くことができないか?と思って紐解いたのではあるが、飛鳥・奈良の辺りまでしか描かれていないのは、少しがっかりした。


とはいえ、小説も書いているという著者の語り口はたいへんわかりやすく、かつ興味深いものだった。以下、面白かった処をメモする。


・アニメ「君の名は。」を大きく評価。この素の発想は、万葉集の「誰そ彼と  我をな問ひそ  九月の  露に濡れつつ  君待つ我を」を受けてのものだった。男と女、友と友、土地と人、親と子、神と人、田舎と都会、現代と古代、それら関係が、結びによって生まれるものと思い、それこそ生きる力の根源であり、日本人の信仰心の根源なのだ、と説いた折口信夫に繋がる。という。新鮮な見方だった。
・右兵衛という役名の男は、宴会に呼ばれて即興で「物の名を歌い込んだ歌」をつくる芸を持っていた。芸名で呼ばれていたために、姓名が伝わっていない。蓋し、芸名の始まりであり、芸人の始祖(これは私見)であろう。
・作り手、歌い手、伝え手、聞き手、等々と歌を巡る流通チェーンがあって初めて「歌集」は出来上がる。その背景に古代の文化、文明があり、想いがある。
・日本語や韓国語は膠着語と呼ばれる。四千年の歴史のある漢字文化圏の辺境である。よって、著しい後進性があり、だからこそ、古いものも残る。また、遅れているから、先進性を取り入れる構造も持っている。
・山上憶良は「日本型知識人」の最初期の代表である。無位無官の身でありながら、その学殖によって遣唐使に任命され、帰国後学問によって、最下位ながら貴族に列した。漢字文化や仏教思想を熟知しながら、漢字と大和言葉を駆使して、「組み合わせ」「ずらし」て独自の「大和魂」を語り残した。この型に、近代では森鴎外、夏目漱石、九鬼周造、和辻哲郎などがいるだろう。また、加藤周一もその中に入る(私見)。
・万葉集に「竹取の翁」の話があるが、竹取はしなくて、かぐや姫は現れず、九人の仙女と歌の力で結婚する話になっている。当時は仙女邂逅譚がブームだった。「竹取物語」の「異伝」というのが著者の見解。万葉集は物語文学の萌芽である。
・「文章こそ人が生きた証なのだ」という「文選」を手本にしたのが「万葉集」である。よって、天皇から庶民まで登場し、文は個人の思いを述べるものであり、詩歌は個人の情を伝えるものであって、そこに身分の上下など関係ないはずだ、という思想がある。もちろんどちらも貴族文学だから、それが徹底されていたわけではない。でも、積極的に「オールジャパンの歌集」を演出している。
・著者は、奈良大学のゼミナールがこの本の元だと謝意を表している。しかし、「睡魔と闘いながら粘りつよく話を聞いてくれた」「十哲には、あらためてお礼を申し上げたい」とかなり「あとがき」とは思えない皮肉を書いている。蓋し、こういう人なのだ。

2019年1月読了






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最終更新日  2019年01月25日 12時13分38秒
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