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テーマ:映画館で観た映画(8347)
カテゴリ:洋画(12~)
映画評「スリー・ビルボード」 毎年2月の第4月曜日の午前から昼過ぎにかけての約3時間、映画ファンならば気もそぞろになる出来事が起こります。米国アカデミー賞の発表があるのです。私は携帯を始めてからは、ほぼリアルタイムで結果を把握してきました。今年は2月25日です。 アカデミー作品賞、監督賞が、必ず私のベスト10に入るかどうかは、観てみなくてはなんとも言えません。確率は五分五分でしょうか。ただ授賞作品は必ず観ます。 昨年は「シェイプ・オブ・ウォーター」が作品賞・監督賞を獲りました。けれども、私は主演女優賞・助演男優賞の本作を断然推します。それは私だけではなく、 昨年秋にキネマ旬報が、ベスト・テン外国映画第1位、読者選出外国映画第1位、外国映画監督賞、読者選出外国映画監督賞をこの作品に授けたことでも、少数意見ではないことが分かります。圧倒的なヒリヒリするようなドラマでした。 冒頭、ミズーリ州の寂れた道路に、町の警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)を非難する巨大な3枚の広告看板(ビルボード)が現れます。設置したのは、7カ月前に何者かに娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)です。何の進展もない捜査状況に腹を立てケンカを売ったわけです。 署長を敬愛するディクソン巡査(サム・ロックウェル)や町の人たちは、彼女をなじります。ここまでは、保守的な田舎町に反逆する女性の物語かと思います。ところが、そこから不穏な事件が次々と起きるのです。 混沌とはしていません。不思議とまとまっています。3枚の広告が、チェスの一手のように手詰まりだった町を動かし、3人の人物を動かし、途中3通の手紙が、憎しみの連鎖で破滅するかに思えた結末を、不思議な赦しの物語に変える構造になっているからかもしれません。悪人の中に善人が隠れている。リアルなんだけど何処か寓話的な、不思議な話でした。 田舎町の描写は、アメリカの閉塞感を表し、トランプ支持層の現実とはかくなるものかと思わせます。黒人、障害者、イラク派兵等々の問題も出てきます。まるで3枚のビルボードが見せる米国の曼荼羅でした。 米国アカデミー受賞作品は、たいていは力作です。でも、最終的な評価は、やはり直接観ないと判断出来ません。さて、今年はどうなるでしょうね。(2018年米国マーティン・マクドナー監督作品、レンタル可能) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019年02月17日 09時07分12秒
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