再出発日記

2019/04/17(水)10:13

今月の映画評「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」

洋画(12~)(337)

今月の映画評はマイベスト3位のこの作品です。 「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」 昨年春、スティーヴン・スピルバーグ監督は二本のまるきりタイプの違う作品を世に出しました。ひとつは、日本のガンダムや世界のヒーローが一堂に集まって競争するCG満載の春休み映画(「レディ・プレイヤー1」)、もうひとつは骨太の作品「ペンタゴン・ペーパーズ」です。メールも高性能のコピー機もなかった時代の「報道の自由と使命」を描きました。もとは前者の方に力を注いでいた監督は、2017年1月に誕生したトランプ政権に危機感を覚えて急遽製作と監督を引き受けたのです。なんと17年秋の公開に間に合わせ、この作品は昨年のアカデミー作品賞にノミネートされました。 1971年。当時ベトナム戦争は明らかに泥沼化して、勝利の見通しはありませんでした。現代の我々がそれを聞くと「当たり前だろ」と、感想を持つかもしれなませんね。でも、アメリカ政府はまるで何処かの国のように、ずっと嘘とごまかしの説明をしていました。戦争調査内容はペンタゴン・ペーパーズ(最高機密文書)として隠されていましたが、NYタイムズがその内容をすっぱ抜きます。 実は、アメリカにも秘密保護法があります。NYタイムズは追加記事を出せない状態になりますが、ライバル紙のワシントン・ポストの編集主幹トム・ハンクスは文書を手に入れることに成功します。 一方メリル・ストリープ演じるポストの社主は、株式公開を控えて後発の記事を出すのかどうか難しい決断を迫られます。「新聞は国民の繁栄と自由のために尽くすべきです」と銀行を説得するのです。記者が特ダネを報道したいのはわかる。しかし、映画は経営者の矜持と決意を描きました。幹部全員が罪を被ってもおかしくはありませんでした。けれども、最高裁判所は世論の高まりを受けてこのように判決を下します。「報道が仕えるべきは国民だ。統治者ではない」。 翻って、日本でこのような映画は可能だろうか?観ている間、ずっと思っていました。日本の報道機関は、一度でもこんな闘いをしただろうか?もちろん、国民の支持がないと新聞社は動かなかったでしょう。米国と日本の違いをいろいろ考えさせられました。 ラストシーンは、ニクソンを辞任に追い込んだウオーターゲート事件を描いた映画「大統領の陰謀」の冒頭シーンでした。(2018年米国作品・レンタル可能)

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る