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2019年05月10日
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テーマ:本日の1冊(3040)



「精霊の木」上橋菜穂子 新潮文庫

デビュー作には、作家の全てが出るという。先ずは、デビュー作から長編であり、かつ未来SFファンタジーというのが上橋菜穂子さんらしい。

そして冒頭書き出し。

『その不思議な光がナイラ星にあらわれたとき、最初にそれを発見したのは、第四チタン鉱山の夜間監視員だった』

この50字の中に既にファンタジーとしての様々な「設定」の多くをぶち込んでいて、デビュー時の気負いと才能と、そして夢を感じる。上橋さんは濃密な「世界」を創ってから書き始めた。未来地球史から未来文明小道具、ナイラ先住民の言葉や地理等々、文章の裏側にある設定が山のようにあるのが判る。また、最初の数ページにアボリジニとオーストリア政府との関係が既に透けて見える。と思って後書きを見ると、未だアボリジニ調査をする前の作品だった事にびっくりした。文化人類学を本格的に研究する前から、既にその方向性は決まっていたのだ。

体裁はジュブナイルだが、何の準備もせずにこの作品を読む少年・少女には少し荷が重かったかもしれない。実際、上橋作品を読んで来た我々だからこの世界に付いて行ける処がある。編集者に言われて540枚を400枚に削ったそうだ(私なんかは、その中に原住民と地球史との接点が描かれていたのではないかと想像したりする)。しかし、描き足りなかったから、売れなかったわけではない。世界が濃密すぎたから売れなかったのだ。

いや、そうではない。この作品はデビュー30年を経て「とき」を待っていたのだ。若書きが書かせた思える以下のストレートな台詞は(それ以外のステキな言葉も)、今文庫本で広く読まれることによって、やっと「陽の目に当たる」のかもしれない。

あの事故にあうほんの2時間前の、ジムの言葉が心に焼きついて、離れなかった。

「歴史ってのは、過去におかしたあやまちを、二度とくりかえさないために、学ぶんじゃないんですか?それを、いまいちばん正さなきゃならない恥部を、うそで塗りかためて、おそろしい悪事をつづける手伝いをするんじゃ、わたしは、なんのために生きてるんです?」(73p)

「それはわかるけどさ、母さんは北米先住民を美化しすぎてんじゃない?」

「彼らも人間だから、みにくい面もあったでしょうし、べつに彼らが理想郷に住んでだなんて思ってるわけでもないわ。自然の猛威の前に、なすすべもない人間っていうのは、ひどくみじめな存在でしょうしね。でも、その自然におびえ、おそれながらも、彼らはその自然が、自分たちを生み、はぐくむ親であることも、心の奥底で知っていて、仲間とつきあうときのような気づかいとやさしさを、自然にたいして持ってたような気がするのよね。

    たとえば、ある北米先住民たちは、太陽を父、大地を母だって考えていたの。そして、春は母である大地が、いのちをはらむ時季だからって、きずつけないように、靴をぬいではだしで歩いたの。

   文明人たちは、よくまあ迷信を信じられるもんだって笑ったわ。でもね、その大地をはだしで歩いた人たちは、一万年以上も自然を破壊することなく暮らし、文明人たちは、そのわずか四百年後に、地球を破滅させたわ」(124p)







最終更新日  2019年05月10日 11時23分56秒
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