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カテゴリ:読書フィクション(12~)
「鴨川食堂」柏井壽 小学館文庫 鴨川食堂と言いながら、東本願寺の近くである。「正面通の東洞院を東」と京都通ならば、割とわかりやすい住所を明らかにしている。私もこの前の旅で歩いた辺りだったので、とてもイメージが湧いた。鴨川食堂は看板も出していない二階建てのしもた屋だ。実際、根を詰めて探しても現実にその店があるはずもない。想像上の店に、気のいいアラサーのお嬢さんと食の名人で僅かな情報から思い出の食を探り当てる流という料理人がいる。 京都を知り尽くしてると自他ともに認める作者が、小説という形で「美味しいもの」を表現している。ここに出てくる京料理のほとんどは、かなり京都に通い詰めてそれなりにお金も落とさないとたどり着けないものばかりなので、私は反感を覚える。一方で思い出を再現する表題の料理は、「鍋焼きうどん」「ビーフシチュー」「鯖寿司」「とんかつ」「ナポリタン」「肉じゃが」と普通手の届くものばかりだ。上手いことバランス取っていると思う。 流料理人の推理は、あらかじめ結論が出ているものを探すわけだから、何の驚きもない。ただし、京都の食文化をきちんと伝えたいという情熱は感じた。最後まで読んで、辛口だった評価が、だんだんと豊かな風味を帯びてくるのを認めざるを得なかった。
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最終更新日
2019年05月22日 13時26分10秒
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