再出発日記

2019/08/15(木)09:17

映画評「日本のいちばん長い日」

洋画(12~)(337)

今年の県労会議機関紙8月号に載せた映画評です。 「日本のいちばん長い日」 今年は1945年8月15日の玉音放送までの24時間を描いた「日本のいちばん長い日」を取り上げます。14日の深夜に、陸軍将校畑中少佐を中心とする若手軍人によるクーデター未遂事件があったことはあまり知られていません。最後の最後まで綱渡りだったのです。誰がどう決断したのか?岡本喜八監督(1967年)と原田眞人監督(2015年)の2作あり、2つとも力作です。岡本版は、オールスターがドキュメンタリーのように膨大な台詞を発して庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」の手本になったと言われたました。岡本版と原田版を、今回見直してかなり違っていました。大きく違うところが、何点かあります。1つは、岡本版も鈴木首相(笠智衆)と阿南陸相(三船敏郎)が阿吽の呼吸で、主戦論渦巻く陸軍を御しながら終戦まで持って行った様に描いていました。しかし、原田版はそれを更に強調します。原田版は岡本版で出すこと叶わなかった天皇(本木雅弘)をほとんど主人公のように出演させています。あえて、軍閥とは程遠い老獪な鈴木貫太郎(山崎努)を首相に据えたのも天皇の意向ということになっています。阿南陸相(役所広司)と鈴木と天皇は、侍従武官、侍従長、天皇と旧知の仲という事を明かし、阿南の「腹芸」の場面を新たに作っています。確かに、敗色決定とも言える状況で「あともうひとつ成果」を求めた政府の対応が、国民に大きな犠牲者を出した事は否定出来ないものの、あの時点の様々な「決断」がなければ、更に敗戦日が延びた可能性は十二分にあったのです。1つはクーデターの首謀者、畑中少佐は、岡本版では黒沢年男が演じて、直情決行、狂気とも言える存在感を出していました。原田版は松坂桃李がまた違う狂気を演じています。1つは岡本版には女性は新珠三千代しか出演しなかったが、原田版には重要な役で何人もの女性が出演しています。よかったら、岡本版原田版と続けて見ると、日本の政治の意思決定の複雑さと、当時の戦争の雰囲気が良くわかって面白いと思います。動き出したら止まらない。戦争は、巨大な機関車のようです。車輪が外れ、燃料がなくなり、それでも運転しようとする狂気の機関士を止めないと、止まらないのです。(2作品ともレンタル可能)

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