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テーマ:本日の1冊(3685)
カテゴリ:読書(ノンフィクション12~)
「特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー(ノーベル文学賞受賞記念講演)」カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 極めて明確に、簡潔に、美しく、イギリスの地で創作を開始した日本人の血を持つ作家が、半生を語った。ノーベル文学賞受賞記念講演。 始まりの2冊は日本を舞台にした英語の文学だった。次は、きわめてイギリス的な話なのに、世界的な世界観を描いた。らしい。 私はカズオ・イシグロの小説は読むまいとしてきた。人生は短く、読まなければならない本ははるかに多い。読み始めたならば、一冊だけで済むとは思えなかった。ただ、この小さな講演記録文章によって、世界基準とも言えるかもしれない文学を見渡す地図を貰った気がした。「遠い山なみの光」と「日の名残り」と「わたしを離さないで」を読んでもいいかもしれないと思い始めている。 最後に一つの呼びかけをー僭越ながらノーベル賞受賞者からの呼びかけをーお許しください。この世界の全体を正すことは困難です。ならば、せめて本を読み、書き、出版し、推薦し、批判し、授賞しつづけられるよう、私たちの住むこの「文学」という小さな一角だけでも、維持発展させていきましょう。不確かな未来に私たちが何か意味ある役割を果たしていくつもりならー今日と明日の作家から、それぞれのベストを引き出そうと願うならー私たちはもっと多様にならなければなりません。(95p) 「この世界」をどう見るのか、なぜ「全体を正すことは困難」なのか、「多様」とは何なのか、は此処に簡潔に語られている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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私は韓国に住んでおりますが、日本から「日の名残り」と「わたしを離さないで」を取り寄せて、この2冊は読みました。
カズオ・イシグロさんがNHKの番組に出たことがあり、その番組のカズオ・イシグロさんに非常に興味が湧いてすぐに取り寄せたんですけど、読んで良かったと思いました。 特に私には「日の名残り」は良かったです。 (2019年09月04日 16時34分00秒)
はんらさんへ
「日の名残り」がどのように良かったのか、読んで確かめたいと思います。この講演では、なんとイギリスの有名な歌を聴きながら、(例えば、普通に旅をして最後の最後に感情を爆発させる、という歌い方に)ヒントを貰ったと言っていました。これが、一つのブレイクスルーだったそうです。 (2019年09月04日 18時31分17秒) |
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