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再出発日記

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2020年01月07日
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テーマ:本日の1冊(3685)
カテゴリ:加藤周一

『称えることば 悼むことば』加藤周一 鷲巣力編 西田書店

他をして自らを語らしむ。加藤周一の書物への推薦文も、友人の弔文も、結果的には自画像になっていたと私は思う。2008年12月5日、日本の知性は、そのひと頭分低くなった。10年を過ぎて、少しその幻影を追ってみた。


自己の感受性に忠実に生きるということ。夢想家だけが、帝国主義戦争の本質を見破れるだろう。(『片山敏彦著作集』1971)

その仕事は、近代日本の散文の基礎を築くことであり、全く独創的な一つの文学形式を生みだすことであった(いわゆる史伝)。しかも科学者としては、衛生学の技術を輸入し、実験科学の精神を説き、思索家としては、儒家の伝統に従って、超自然的な絶対者をではなく天下国家の現在と将来を考え、儒家とは異なり、単に政策ではなく社会構造そのものに思いを致した。仕事は多方面に渡り、業績は、何れをとっても、群を抜く。(『鴎外全集』1971)

いま日本の思想家を、その独創性、対象の包括性、論理の整合性、影響の拡がりによって測り、五指を屈するとすれば、たとえば仏家に空海・道元、儒家に徂徠・白石、国学に宣長をみるだろう。(『荻生徂徠全集』1972)

中村真一郎に三善あり。第一は、天下の政事に係らぬことである。故に安んじて風雅の道に遊ぶことができる。第二は、書を読んで古今東西の文芸に渉ることである。したがって文壇一時の流行を文芸の大道と心得ることがない。第三は、その文章が明快で、おどろくべし、読めばその意味がはっきりとわかることである。思わせぶりの美辞麗句の落ちついて考えれば何のことかよくわからぬ深刻さがないのは、けだし当代文苑の奇観というべきだろう。(中村真一郎『この百年の小説』1974)

この人々は、単に気分に従って生きたのではなく、考えて自己の生涯を択び、常に大勢に順応したのではなく、しばしば少数意見に徹底し、近代日本の発展を、単純な成功物語ではなく、激しい批判の対象としても捉えていた。(『日本人の自伝』1980)

大江健三郎は何故抗議をするのか。(略)それはおそらく平和であり、樹木であり、生命の優しさでもあるだろう。たしかにそれこそは、もし文学者が語らなければ、誰も語らないだろう壊れ易いものである。(『大江健三郎同時代論集』1980)

二葉亭四迷は、いやだから首相の宴会には行かない、といった人である。「このいやといふ声は小生の存在を打てば響く声也」。そのことと、彼がロシア文学の中で、ツルゲーネフばかりでなく、ガルシンやゴーリキを訳したこと、また小説を書いて同時代の日本の一市民の日常生活を、その条件を超えようとする願望との関連において描いたこと、さらに日本語の散文を日常的な話し言葉に近づけた(一致させたのではない)こととは、密接に係っていたにちがいない。(『二葉亭四迷全集』1981)

日蝕がいつ起こるかは正確に知ることができるが、革命がいつ起こるかはわからない。しかし日蝕よりも革命の方が、われわれの生活に大きな影響を与える。自然科学と社会科学とでは、予見可能性と共に扱う対象の性質が違う。その方法はどう違うか。社会科学的の広大な領域を見渡して、およその見当をつけるためにこの講座は役立つだろう。(『岩波講座 社会科学の方法』1992)

ーーーーここに至るまで、未だ全体の1/4ほどからしか抜書きしていない。何処を抜書きしても、恐ろしいほどにその著者の本質を突き、怖いくらいに加藤周一自身を語っているようにしか思えない。たった200-800字ほどの文の中に、加藤周一ほどに10数巻に渡る全集の本質を閉じ込める力量を持つ評論家を、現代日本において私は知らない(誰かいたなら教えて欲しい。しっかり読んで批評させて頂きます)。

「悼む」文章は「称える」よりも比較的長いが、長くても10ページほどに過ぎない。その中に人物を簡潔に的確に纏めて余す所がない。いや、ほとんどはもっと短く纏める。私は40年前に朝日新聞で「福永武彦の死」を読んだ(1979.8.15)。1800字程の文章の中に、未だ読んだことのなかった福永武彦の全てと、限りない友情が詰まっていた。加藤の尊敬するサルトルの弔文、青年時代の師匠林達夫への弔文・弔辞、その他さまざまな友人たちへ捧げる文章。加藤周一ほどに友情を大切にする文学者を私は知らない。

いかん。だんだん、だらだらした文章になってきた。切ります。(文字総数1801)






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最終更新日  2020年01月07日 08時02分14秒
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