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再出発日記

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2020年05月19日
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テーマ:本日の1冊(3685)

「雁」森鴎外 新潮文庫
「夢見る帝国図書館」で刺激された読書の第二弾。

岡田は郷里から帰って間もなく、夕食後に例の散歩に出て、加州の御殿の古い建物に、仮に解剖室が置いてあるあたりを過ぎて、ぶらぶら無縁坂を降り掛かると、偶然一人の湯帰りの女がかの為立物師の隣の、寂しい家に這入るのを見た。(「雁」より)

「夢見るー」では、喜和子さんの愛人だった元大学教授が、まるでお玉のように無縁坂に部屋を借りて住まわせたエピソードが語られていた。

何故、無縁坂か。「雁」のなかでは、末造という金貸しの男が、お玉という若い女を囲い者にして、家を借りてやって住まわせる。その家というのが無縁坂にあり、お玉は無縁坂をしょっちゅう通る帝大生の岡田という男をちょっと好きになるという話である。元大学教授は喜和子さんをお玉のように愛していたのである。

実は3年前の正月に、帝大生岡田の散歩道をわざわざ辿ったことがある。私は水月ホテルという森鴎外ゆかりの宿に泊まっていた(何とホテルの中に森鴎外旧宅が保存されている)。そこではホテル作成の「雁」の小説と散歩道を編集した文庫本を売っていて、それを見ながら朝の散歩をしたのである。

岡田の下宿は、東大鉄門前なのだが、実はそこから歩いて10分ぐらいが無縁坂だった。私は勘違いしていた。「坂」という以上、上がってゆくと思っていたのだが、そのコースだと下るのである。右手に当時作られたばかりの岩崎邸、その左正面の辺りにお玉の「寂しい家」があったということになっている。現在は、マンションが建っていた。更に歩けば不忍池にぶち当たる。

この散歩コースは、普通に歩けば多分1時間。岡田は、その後不忍池を回って、上野広小路と仲町の古本屋街で物色して、湯島聖堂にたどり着く。麟祥院枸橘寺を回って岡田の下宿に帰るコースだ。観光客としては、途中、不忍池反対側の上野公園に行ってもいいし、不忍池の弁天様に参っても良い。麟祥院には春日局の穴の開いた不思議な墓もある。旧岩崎邸は、見どころいっぱいである。お勧めのコースだ。今度上京した折には、上野公園のベンチに座ってみたり、国際こども図書館に入ってみたり、そのまま藝大方面に歩いて行ってみようと思う。

「雁」を久しぶりに読むと、ひとつ気がついたことがあった。お玉と岡田が出会ったのは、明治13年の夏ということになっている。実はその時、湯島聖堂に東京図書館という帝国図書館の前身があったのである。幸田露伴少年が足繁く通っていた頃だし、夏目漱石も来ていたかもしれない。岡田も通ったかもしれない。いや、彼は架空の人物だった。当時の上野界隈が詳細に描かれている。

まったくもって物凄く趣向を凝らした恋愛小説ではない。
「お玉は気の勝った女で、末造に囲われることになってから、短い月日の間に、周囲から陽に貶められ、陰に羨まれる妾と云うものの苦しさを味って、そのお蔭で一種の世間を馬鹿にしたような気象を養成してはいるが、根が善人で、まだ人に揉まれていぬので、下宿屋に住まっている書生の岡田に近づくのをひどくおっくうに思っていたのである。」
‥‥要するに、妾だけれども、少女のような恋愛初心者として描かれている。森鴎外は、一種の心理小説を実験してみたかったのかもしれない。

結末は、まったく記憶の外にあった。蓋し、その時〈雁〉が登場して何を象徴していたかを知り得ても、運命の悪戯というものを了解する以外は、人生にはなんの役にも立たなかったとは思う。







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最終更新日  2020年05月19日 13時26分26秒
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