4900355 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

再出発日記

PR

フリーページ

カテゴリ

お気に入りブログ

ソウル市長の死因は… New! lalameansさん

ギューギュー詰めの… New! はんらさん

ウィルスとおカネを… New! 七詩さん

螺旋(一) New! Hiro Maryamさん

『“機関銃要塞”の少… New! Mドングリさん

カレンダー

2020年05月19日
XML
テーマ:本日の1冊(3185)

「雁」森鴎外 新潮文庫
「夢見る帝国図書館」で刺激された読書の第二弾。

岡田は郷里から帰って間もなく、夕食後に例の散歩に出て、加州の御殿の古い建物に、仮に解剖室が置いてあるあたりを過ぎて、ぶらぶら無縁坂を降り掛かると、偶然一人の湯帰りの女がかの為立物師の隣の、寂しい家に這入るのを見た。(「雁」より)

「夢見るー」では、喜和子さんの愛人だった元大学教授が、まるでお玉のように無縁坂に部屋を借りて住まわせたエピソードが語られていた。

何故、無縁坂か。「雁」のなかでは、末造という金貸しの男が、お玉という若い女を囲い者にして、家を借りてやって住まわせる。その家というのが無縁坂にあり、お玉は無縁坂をしょっちゅう通る帝大生の岡田という男をちょっと好きになるという話である。元大学教授は喜和子さんをお玉のように愛していたのである。

実は3年前の正月に、帝大生岡田の散歩道をわざわざ辿ったことがある。私は水月ホテルという森鴎外ゆかりの宿に泊まっていた(何とホテルの中に森鴎外旧宅が保存されている)。そこではホテル作成の「雁」の小説と散歩道を編集した文庫本を売っていて、それを見ながら朝の散歩をしたのである。

岡田の下宿は、東大鉄門前なのだが、実はそこから歩いて10分ぐらいが無縁坂だった。私は勘違いしていた。「坂」という以上、上がってゆくと思っていたのだが、そのコースだと下るのである。右手に当時作られたばかりの岩崎邸、その左正面の辺りにお玉の「寂しい家」があったということになっている。現在は、マンションが建っていた。更に歩けば不忍池にぶち当たる。

この散歩コースは、普通に歩けば多分1時間。岡田は、その後不忍池を回って、上野広小路と仲町の古本屋街で物色して、湯島聖堂にたどり着く。麟祥院枸橘寺を回って岡田の下宿に帰るコースだ。観光客としては、途中、不忍池反対側の上野公園に行ってもいいし、不忍池の弁天様に参っても良い。麟祥院には春日局の穴の開いた不思議な墓もある。旧岩崎邸は、見どころいっぱいである。お勧めのコースだ。今度上京した折には、上野公園のベンチに座ってみたり、国際こども図書館に入ってみたり、そのまま藝大方面に歩いて行ってみようと思う。

「雁」を久しぶりに読むと、ひとつ気がついたことがあった。お玉と岡田が出会ったのは、明治13年の夏ということになっている。実はその時、湯島聖堂に東京図書館という帝国図書館の前身があったのである。幸田露伴少年が足繁く通っていた頃だし、夏目漱石も来ていたかもしれない。岡田も通ったかもしれない。いや、彼は架空の人物だった。当時の上野界隈が詳細に描かれている。

まったくもって物凄く趣向を凝らした恋愛小説ではない。
「お玉は気の勝った女で、末造に囲われることになってから、短い月日の間に、周囲から陽に貶められ、陰に羨まれる妾と云うものの苦しさを味って、そのお蔭で一種の世間を馬鹿にしたような気象を養成してはいるが、根が善人で、まだ人に揉まれていぬので、下宿屋に住まっている書生の岡田に近づくのをひどくおっくうに思っていたのである。」
‥‥要するに、妾だけれども、少女のような恋愛初心者として描かれている。森鴎外は、一種の心理小説を実験してみたかったのかもしれない。

結末は、まったく記憶の外にあった。蓋し、その時〈雁〉が登場して何を象徴していたかを知り得ても、運命の悪戯というものを了解する以外は、人生にはなんの役にも立たなかったとは思う。








最終更新日  2020年05月19日 13時26分26秒
コメント(3) | コメントを書く
[読書フィクション(12~)] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ

利用規約に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、こちらをご確認ください。


Re:明治13年の森鴎外「雁」(05/19)   ポンボ さん
国際こども図書館は、いいですよぉ。
鉛筆以外でのメモは禁止でしたけれど。
なんか、ほっとできる空間です。懐かしい、古いこどもの本がたくさんありますし。半日は欲しい、かも。
近隣の明治頃の建築物も、外から見ているだけでも、異空間。明治大正の頃の日本にいるみたいな錯覚を感じます。
あっ、我孫子って、確か上野から行けるんですよね。意外と近いんですよ、ただ、我孫子は、広くは無いのですが、一日で回りきれないくらい、盛り沢山です、kumaさんには、特にね。 (2020年05月20日 09時14分44秒)

Re[1]:明治13年の森鴎外「雁」(05/19)   KUMA0504 さん
ポンボさんへ
ありがとうございます。
鉛筆以外禁止ということは、当然中の建物を撮るのもダメなんだろうなぁ。
でも、「夢見るー」を読んだ以上、いつか行きます!

我孫子そんなに見どころ満載なんですか!
チェックしておきますね! (2020年05月20日 09時53分13秒)

Re:明治13年の森鴎外「雁」(05/19)   ポンボ さん
上京、我孫子散策は、まだまだ先になりそうですよ。東京も千葉も解除されてませんし、その内、圏外移動に通行手形と言う案もあるそうですし。またしても罰則は無いでしょうけれど。 (2020年05月21日 10時03分26秒)

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

KUMA0504@ Re[5]:角間さんは無言で振り返った「健康で文化的な最低限度の生活9」(07/08) 七詩さんへ その一点だけで、ウソだという…
abi.abi@ Re:かっこわるいけど、かっこいい「なにたべた?」(07/08) 読んでみたくなりました! 伊藤比呂美さん…
KUMA0504@ Re[1]:角間さんは無言で振り返った「健康で文化的な最低限度の生活9」(07/08) はんらさんへ こんにちは。 それはね、お…
zzz@ Re:なぜ弱者を抹殺してはいけないのか?(07/31) 「弱者を抹殺してはいけない」と言える者…
KUMA0504@ Re[3]:「神話と文学」を歴史学で読み解く(06/03) ポンボさんへ 本のベットですか。 とても…

バックナンバー


Copyright (c) 1997-2020 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.