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2020年07月11日
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「「勤労青年」の教養文化史」本間良明 岩波新書

1950年代に20代だった「勤労青年」の叔母は、日本文学全集や百科事典などの蔵書を遺していた。戦争で学校に行けなかった彼女の心のうちを知れるかと思い紐解いた。

映画「キューポラのある街」(1962)において、ジュン(吉永小百合)は、最終盤、やっと全日制高校に行ける目処がついたのに敢えて夜間高校に行くことを決める。「これは家のためっていうんじゃなくて、自分のためなの。たとえ勉強する時間は少なくても、働くことが別の意味の勉強になると思うの。いろんなこと、社会のことや何だとか」

著者は、62年当時は、これが大衆に大いに支持されたことを指摘する(キネ旬二位、映画評論一位)。教養主義とは何か。著者の説明は以下のようなものである。
「さまざまな困難を乗り越えて、働きながら学び、実利を越えた何かを追求する」
「読書を通じた人格陶冶」
「文学・思想・哲学等の読書を通して人格を磨かなくてはならない」
つまり、試験でいい点をとったり、良い就職先にありつくことではなかった。

これは現代の学生には、全く支持されないと、著者はいう。特に小百合の言う「実利を超越した勉学・教養」という主題に共感した(著者の受講生の)学生は、皆無だったと指摘する。著者は、その背景に「格差と教養」をめぐる時代背景があるのだ、と論を進める。

悪い予感が当たった。
著者は肝心の「教養」を持ちあわせてはいない。或いは、誤った「教養」を持っている。

京大出身の社会学者である著者は、ホントに勤労青年の「人格陶冶」への渇望の意味がわかったのだろうか。社会現象として解説しただけではないか。もちろん、これを全面的に展開しようとしたならば、小熊英二の「1968」ならぬ「1958」が必要になるだろう。無名の個人の思想変遷にはまで筆を進めなくてはならない。そのボリュームを覚悟して欲しかった。

昔は若者は健気に頑張った。でも、困難や時代の推移で、今は完全に廃れている。寂しいよね。

そんな内容を書くのが、「教養」が求めていることではない。「教養」は、人は如何に生きるべきか、を求めているだろう。

今ホントに教養主義は、廃れているのか?
地方は昔と同じように疲弊している。
労働環境は昔と同じように展望がない。
世界の文明はますます危機に瀕している。
青年はホントに「実利を超えた勉学・教養」を求めていないのか?現代青年の教養に対する意識調査は、著者はひとつも紹介していない。

現在無数のサークルが日本に存在しているが、それは教養主義とリンクしていないのか?
全国的な「勤労青年」の学習組織も存在しているが、著者はなぜ完全無視したのか?

叔母さんは、結局花道と茶道で免許皆伝を取った。そうやって人生に折り合いをつけたのだと思うが、広く地域と結びつかなかった。その頃は既に、地域の組織は衰退を始めていたからである。





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最終更新日  2020年07月11日 20時22分04秒
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