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カテゴリ:読書フィクション(12~)
「泣くな道真 太宰府の詩」澤田瞳子 集英社文庫 初めての作家。文庫書き下ろしではあるが、ラノベに近い時代小説が多い中で、しっかり時代考証をしていて好感を持った。ただ、キャラは現代によせている。そのせいか、十分エンタメ小説になっていた。買ったのは、ナツイチのブックバンドが欲しかったタメ。 菅原道真が左遷された太宰府での赴任先半年の日々がテーマ。 「半沢直樹」ではないけど、まるで社会人小説のように「左遷からどう立ち直るか」がテーマ。 思うに、奈良・平安時代は、まだまだ小説化されていない時代・人物・地域の宝庫だろう。さすれば、10世紀初頭失意のうちに太宰府で歿(なくな)ったと云われる道真を、実はそうではなく、その才能を活かして、密かに政敵の藤原時平に倍返しまでは行かずとも意趣返しをしていた、と作り替える本書は、充分に「スカッと」する平安時代版「半沢直樹」だろう。 江戸時代の東京はたかだか400-150年前の舞台に過ぎない。千年の都・京都も長いかもしれないが、実は福岡は更に1700年前から都だった。ということは、あまり知られていない。実は博多津の発掘が次々となされて、更には周辺地域の遺跡がどんどん掘られて、当然莫大な量の遺物が出てきて、最近になってやっと分かりかけてきていることが多い。澤田瞳子はよく読み込んでいると思う。博多津や太宰府東北の水城の景観などをよく説明している。私の興味はあくまでも弥生時代ではあるが、発掘成果を小説に反映させるという視点では、面白い。 小野恬子(てんこ)という名前が出てきた時点で、あの有名歌人と思い出さないのは、私の不徳の致すところ。彼女の出没地域は全国に及んでいて、岡山県総社市には墓まである。生涯は不明である。太宰府にいたとしても、全然不思議じゃなかった。 あと一作は、読んでみたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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