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カテゴリ:読書フィクション(12~)
「四畳半神話体系」森見登美彦 角川文庫 今夏、衝撃の話題が読書界を駆け抜けた。 「森見登美彦の新作の題名は『四畳半タイムマシン・ブルース』らしいぞ!」。 森見作品は、未だ4作しか読んでいなかったが、その作品たるや、才弁縦横、軽妙洒脱、機知奇策、因循姑息、満漢全席たるものばかり。しかもリスペクト作品として使われた「サマータイムマシン・ブルース」(2005)は、上野樹里を初めて発見した記念すべき傑作映画である。読まねばなるまい。 しかしその為には、続編の元となる作品には手をつけておかねばならない。幸い舞台になった京都下鴨界隈は、昨年春に歩き通した所なので土地勘がある。さらに言えば、大学受験は兄の洞穴のような左京区の下宿を基地として2週間大学を受けたせいで、その間ずっと寺巡りはするわ、名画座の京一会館で初めてピンク映画を観るわで、憧れの京都の大学生になりそこね、西の京都に都落ちする結果になったのだからなおさら土地勘はある。‥‥それは良いとして、下鴨泉川町にあるという下鴨幽水荘という重要文化財の境地に達した下宿屋の四畳半を舞台として繰り広げられる、大学生活のあり得るかもしれない可能性の物語。主人公たる「私」と友人の小津が、何やら名誉ある「意味のないこと」をする話である。どう考えてても「私」は、読むのはいいけど、友だちにするのには鬱陶しくてたまらない類の人種ではある。自意識高くて、ネガティブで、人見知り。そこへ、同じ匂いを持ちながらテンションだけは高い小津が絡む。おや、これはまるでオードリーの若林と春日の関係じゃないか。因みに、森見登美彦は彼らの舞台など見た事はなかったはずだと、わたしは関係ないけど擁護しておこう。 四畳半には、「私」は3年間しかいなかった(かもしれない)が、わたしは4年間いた。その狭さと男汁が染みつく汚さも、深遠なる世界を有し80日間も彷徨えるほどの可能性あるのも良く知っている。この前30年ぶりに訪ねたが「雨月物語」の浅芽が宿が如く住む人もなく荒れ果てていた。‥‥それは良いとして、この作品が四畳半世界のまさかの並行世界(パラレルワールド)で成り立っていたとは知らなかった。だとすれば、パラレルの横糸にタイムマシーンの縦糸が重なれば、もしかしたら素晴らしい正方形のタペストリーが出来上がるかもしれない。次回作が愉しみだ。 因みに、彼らの「無意味な」足掻きは、2年前の2月に百万遍交差点で「韋駄天コタツ」を囲んだ、著者の後輩たる京大院生たちことを彷彿させる。名前の判明している2人のその後を調べたが26歳男の方は杳として知れず、31歳女性の方は益々盛んにTwitterで発信していた。男の方が臆病で繊細なのは、正に現実社会でも同じということか。さらに因みに、ネットの反応は一様に「最高学府に入って何社会に迷惑かけてんだ」とか「森見登美彦に風評被害じゃないか」とかいうものだったが、「何バカなこと言ってんだ(何、あんたらは親戚でも友だちでもないのに社会や著者に忖度してるんだ)」というのがわたしの感想である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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Mドングリさんへ
誤解なさってはないとは思いますが、一応確認。 タペストリーは、「四畳半タイムマシン・ブルース」の方です。でも、読了した方から言えば、この「四畳半神話体系」は読んで置いた方がいいそうです。 因みに、このレビュー書いたあと、速攻で「四畳半タイムマシン・ブルース」を図書館に予約入れましたが、10位になってしまいました。あと4ー5ヶ月間は読めそうにありません(泣)。 (2020年09月17日 20時02分19秒) |
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