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カテゴリ:読書フィクション(12~)
「三体」劉慈欣 大森望、光吉さくら、ワン・チャイ訳 早川書房 中国のSF小説である。現代の中国。ある時、エリート科学者3人が2ヶ月の間に、立て続けに自殺した。その背後には、宇宙で起きているとてつも無い秘密が隠されていた。 現代科学では立証できないことは非常に多い。残念ながら非立証性事実の存在は小説内のことではなく、現代世界の厳然たる事実である。しかし「SF小説」は、易々とその背後関係を説得力もって(時には力づくに)説明する。宇宙の秘密は、一冊の本の中に閉じ込められる。これこそがSFである。読者はそこから、さまざまな想像を掻き立てる。それこそがSF体験である。 「三体」について私の感想を五割増専門的にしたものを、訳者の大森望さんが「訳者あとがき」の前半2pで書いてしまっていた。同じ感想なので省略する。そういうわけで、大変面白かったとだけ書いておく。 その他、つれづれ思うことを付け足す。 ・現代の中国エンタメ文学(つまり2100万部も売れた小説)で、ここまで文革批判が自由に出来るのか、と少し意外だった。それは即ち毛沢東をはじめとした、当時の政権幹部全てを批判することと同じなのだが、彼らはみんな鬼籍に入っているからいいのか?中国四千年の歴史の中では、それぐらいどうってことはないのかもしれない。 ・実は1番心に残ったのは、「SF体験」ではない。知識人と庶民から見た文革の顛末を、全く新しい視点から読ませせてもらったところである。特に父親を殺した元紅衛兵元少女たちのとの邂逅場面は面白かった。エンタメ小説の醍醐味だ。わたしの観た中国は文革終了15年後の北京と20年後の上海だった。あの時も、中国四千年の歴史と変化の速さにおののいたものではあるが、それから更に15年後の中国がどんな化物になっているのか、また観たくなった。 ・既に発動しているが、長編ドラマ化は大変愉しみだ。それ以外にも、現代中国ならば映画化も必然だろう、と思う。このような無駄な文化的娯楽が、おそらく三体人には脅威だと思われるからである。 それでは、またのログインをお待ちしています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年10月02日 10時38分11秒
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