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再出発日記

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2021年10月22日
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「明治大正京都追憶」松田道雄 岩波書店同時代ライブラリー

本書を紐解いたのは、あるサイトで、私が斎藤美奈子「挑発する少女小説」レビューで「女の子には、男の子よりも「未来」がある気がする」と書いたら、某氏からコメントを貰ったから。
「(松田道雄に関して私への)お薦めは「明治大正 京都追憶」そうそう思い浮かべたのが「私は女性にしか期待しない」でした、、、」

コレでてっきり本書に「私は女性にしか‥‥」の言葉があると思ったのに、いくら読んでも出てこない。あとでもう一度考え直したら、「私は女性にしか‥‥」は、松田道雄のほかの著書の「題名」でした。うーむ、勘違い‥‥‥‥という経緯で読み始めたのですが、確かにお勧めされるだけあって「私好み」の本でした。ありがとうございました♪

1908年(明治41年)、生後六ヶ月で京都に移り住んだ松田道雄は幼年、少年時代を京都に生活した。著者の「京都」「(明治大正)世相篇」である。そういう意味では、先に読んでいた「一〇〇年前の女の子」のテイさん(明治42年生まれ)と似通っている。ところが私は、テイさんほどは感銘を受けなかった。

「あとがき」に書いているように、松田道雄さんは自らの記憶だけで本書を書いているわけではない。京都は昔から日本有数の都だけあって、新聞や書物が多く残り、また子供時代の友だちから多くの証言をとって自らの記憶を調査・補強して執筆していた。それが悪いということではなく、むしろ学術的価値の高い「記録」になっているのではあるが、テイさんのように、日本人の「心性」にまで落とし込んだ「証言」とまではいかないのである。あくまでも明治大正の世相史という気がする。一方で「一〇〇年前の女の子」はヘタをすると、弥生時代まで想像できるような言葉に満ちていた。

京都だけあって、現代の明治建築遺跡巡りの本や、大人の明治大正世相の証言は数多くあるが、子供目線からの証言は、初めて知った。奇しくも、2年前秋の京都旅で、私は松田道雄の母校・蛸薬師町の明倫小学校旧正門跡を眺めている。しかも、その元になった明倫舎は、つい最近読んだ心学の石田梅岩の弟子・手島堵庵(1718-1786)が開いた心学講舎である。何かの縁か‥‥。それはともかく、コレはおそらく非常に貴重な本だと思うのであるが、ヘタをすると絶版になりかけている。

ただ、都会の自分史の調査はどのようにしたら良いのか、ここに素晴らしい手本がある気がした。高度成長期直前・直後に生きた私の幼年時代のちょっとした町の記録と私の人生は、このように調べたら書けるのかもしれない。

また、京都に住んだことのある人にとっては、興味深く、懐かしいだろう記述が非常にたくさんあった。

以下、面白かった所をメモ。

・茨城の祖父母が京都見物で驚いたのは、京都女の立ちション姿。「花売りおばさんが、急に路上で塀に背を向け、膝を曲げずに上半身を深く屈した」。小水だけを集めるのに、町にたごを配置したためだろうと松田は推測するが、直に見たという記述はない。大正・昭和の頃には廃れていたのかも知れない。

・仲小路の細い路地に住んでいた頃、様々な売り子などの声が聞こえたという。雲水の「オーオー」「やっこ、はらいまひょ」、または「いさぎ(ハゼ科の魚)、か、ひうおー(鮎の稚魚)」「はったいのこ、いらんかいなあ」「きんぎょう、きんぎょう」「やーきー、丹波ぐりー」修理屋も、たくさん通ったらしい。瀬戸物の割れたのを継ぎ合わせる商売、こうもり傘、下駄や雪駄の修理、すいかけ屋さんはふいごを鳴らして炭を真っ赤におこす。これは幼い松田も見ていた。←全て今は廃れた職業。

・浴場では石鹸以外にも糠袋を使っていた。日本髪の人は、固練りの白粉をしっかり首筋から胸にかけて擦り込んでまた湯船につかった。お灸の後に丸い和紙を貼って湯船に入る人も。男湯には刺青の人も多くいた。←刺青の銭湯での姿は、私もほんの20年前まではよく見た。立派な人、途中までの人、色々だった。

・明治45年ころ、同年代3歳の友だちが疫痢で一晩で死んだ。何の病気か?松田道雄宅は小児科医だったので、食品管理は厳密になった。買い食いは厳禁だったという。

・河鹿(かじか)は売っていた。河鹿を飼うのが流行っていた。生きたハエを餌にするので、祖父は近所の子供からハエ十匹を一銭で買っていた。鳴き声を競わせることもしていて、大正に衰えていた声比べを復活させる動きもあったらしい。その頃には既に京都に売る店は二軒か三軒しかなかったらしい。←鈴虫と同じ趣味の世界。けれども、川の水が清くなくなって廃れたのだろう。

・大正2年、烏丸通に面して、蛸薬師と錦小路の中間に、松田小児科診察所を開業。

・新開地の仲小路と、洛中では、子どもの遊びが違っていた。歴史ある歌があり、昔からの歌が使われた。「鬼になって苦しんで、だいこの汁などねぶりゃんせ」「京の京の大仏っあん、れんこ、れんこ、誰のとなりに誰がいる」‥‥。

・小学校の休み時間の遊び方も、その時代の特色がある。←そういう意味では、我々の時代のドッジボールや相撲、追いかけっこなどもやがては歴史になってゆくのだろうか。他にも色々遊びを発明したような気がするのだけど、今は思い出せない。

・小学生生徒対象の小さな店や屋台があった。たばこ屋の中には文房具と玩具(小さくて安いヤツ、バイ、メンコ、ドン、行軍将軍、日光写真、花火、ピストル、紙煙硝、ビー玉、南京玉、紙風船等々)。子どもは親しみを込めて「おおたけはん」と呼んでいた。屋台店は入れ替わり立ち替わり現れる。虫屋、杉てっぽう屋、夏には水中花を売る店、金魚釣りの店、竹とんぼ屋、カツオムシ屋(鰹節にわく一センチほどの黒い甲虫の背中に軍艦の絵を貼り付けると、軍艦が自動的に動いているように見える。虫ごと軍艦一隻が一銭だった)←昭和30年から40年の初め、我々の小学校の近所になかた屋という名の文房具屋があった。帰り道には「あかざわ屋」という玩具売り店があり、ここにはいつもお婆ちゃんがいて10円や20円の商売をしていた。毎日の小遣いを握り一生懸命考えて買っていたのが懐かしい。時々路上屋台が来てクッキーを上手く削れたら商品がもらえるという商売等々色々来ていた。

・大正6年、松田道雄の活動写真を見た記録(母親の家計簿)がある。「拳骨」や帝国館で「鉄の爪」等のパール・ホワイト嬢が主人公の話。男女平等で、松田道雄の思想はこういう所からも育ったようだ。←岡山の活動写真は1919年ごろから始まっている。岡山は少し遅れたということか。

・加茂川でゴリ釣りを覚える。ゴリとは河川に棲むハゼの様な魚。護岸用の隙間の石から釣る。あっという間に百匹近く獲ったらしい。他にもエビ、どじょうなどがとれた。←羨ましい。私は食用になるような魚を取ったことがない。唯一はアメリカザリガニだろうか。

・京都の商家には私設の望楼が多い。火事の行方を確かめて、商品を速く土蔵に入れるためだが、大文字を見る場所、凧をあげる場所、火事の見物をする場所でもあった。

・松田道雄の母親は2年間だけ詳細な家計簿(婦人の友社発行)をつけた。その内訳はとても興味深い(220p)

・大正8年(1918年)11月、京都に「流感」が流行った(←スペイン風邪とは何故か記入していない)。父親は小児科医なので、子どもへの感染防止に骨をおったし、仕事も忙しかった。この時、下京だけで毎日4、50人が死んだ。学校は休校。予防には烏天狗の嘴の様な形をしたマスクをかけた。おまじないも流行った。白豆三粒、小豆三粒、南天の葉三枚を入れた欝金(ウコン)の袋を腰に下げる、というものらしい。父親は薬を使う。去痰剤にセネガ根の浸剤を使っていた。←スペイン風邪の重要な証言だろう。





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最終更新日  2021年10月22日 15時04分57秒
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