再出発日記

2022/02/26(土)11:58

書評「どっちがどっち まぎらわしい生きものたち」

読書(ノンフィクション12~)(911)

「どっちがどっち まぎらわしい生きものたち」梁井貴史・著 金子貴富・イラスト さくら舎 もうね、何処を開いても面白い。試しに、適当に開いてみました。 ◯「ダンゴムシとワラジムシ」(84p) うーむ、困った。面白くないのではなくて、全部面白い。出来たら全文書き写したい。 ゴメン、この調子でレビューするとものすごく長くなりそう。でも、私が「好きで」「後学のために」記録しているので、全部読まなくていいですからね。では、面白かったところの一部をメモ。 ⚫︎ダンゴムシもワラジムシも名前はムシになっていますが、虫(昆虫)ではなく甲殻類に属し、エビやカニの仲間です。 ⚫︎男女を問わず幼児に1番人気がある「虫」がダンゴムシです。「丸くなる」というのが、幼児にとってはチャームポイントとなるのでしょう。つまもうとしたら、くるっと丸くなるお菓子を発売したら、子どもに爆発的に売れるかも知れません。 ⚫︎ダンゴハムシには「交替性反応」といって、障害物にぶつかって最初に右に曲がった場合は、次にぶつかると左に曲がり、次は右に、次は左に‥‥という具合に、左右交互に進路をとる性質があります。もし障害物にぶつかるたびに同じ方向に曲がっていたら、ぐるっと一周回ってもとの場所に戻ってきてしまいますが、この性質により、敵に遭遇して逃げるときなど、より遠くに逃げることができます。 ⚫︎ワラジムシも足は7対ですが、ダンゴムシに比べて平べったい体をしています。ヨーロッパ原産の外来種です(はるばるヨーロッパからやってきて、日本で「草鞋を脱いだ」次第です)。こちらも石や床の下など湿ったところに住んでいて、ひの当たらない便所のあたりにうろちょろしているのが散見されるので、別名「便所虫」などありがたくないニックネームで呼ばれることもあります。両者ですが、ワラジムシはダンゴムシと違って、驚いても丸くならないので直ぐ区別できます。 ◯ムササビとモモンガ(12p) ⚫︎ムササビもモモンガも漢字では「鼯」(←鼠編に吾!)と書くことから、昔は両者を区別していなかったことがわかります。区別するようになったのは、明治時代になってからです。 ⚫︎ムササビもモモンガも「飛ぶ」のではなく「滑空」 します。哺乳類で飛ぶ(翼をバタバタさせる)ことのできるのはコウモリだけです。 ⚫︎彼らは決して地上には降りません。「ちょっと喉が渇いたので、地上に降りて岩の間から滲み出る湧水をごっくん」なんてことはありません。水分は食料に含まれる水分や夜露で補います。まさに完全な樹上生活です。人間の社会では「しっかりと足をつけて」などと諌めたりしますが、彼らは子どもを何と言って戒めているのでしょうか。 ◯アフリカゾウとアジアゾウ(15p) ⚫︎ゾウの中でも、アフリカゾウは現存する陸上動物の中でも最大で、オスには体重8tに達するものもいます。その大きな体を維持するために食べている量は1日に150キロくらいで、食事時間は10時間以上です。そしてウンチの量は一日に75キロ。じつにダイナミックです。 ⚫︎1日に10時間も草を噛んでいたら、歯も摩滅してしまうのでは?と心配になりますが、好都合なことに臼歯(奥歯)は摩滅すると、6回も生え変わります。一本の臼歯の重さは約3kg。 ⚫︎アジアゾウはアフリカゾウに比べると体も耳も牙も一回り小さく、メスの牙は外から見えません。サーカスで芸をするゾウは、アジアゾウと思ってまず間違いありません。 ⚫︎象という字は典型的な「象」(しょう)形文字で、まさに象(かたど)られたものです。ゾウと呼ぶのは漢語の「象」の呉音が「ゾウ(ザウ)」に由来します。寿命は60-70年です。 ◯ミーアキャットとプレーリードッグ(29p) ⚫︎ミーアキャットはアフリカ南部の平原や砂漠に住んでいます。日光浴が大好きで、朝は並んで日光浴をする姿が見受けられます。「キャット」と名付けられていますがネコの仲間ではありません(マングースの仲間)。岩場などに10-15頭の群れで暮らし、昆虫や小鳥を食べる肉食動物です。 ⚫︎プレーリードッグは北アメリカの草原に住んでいます。「ドッグ」と名付けられていますが、犬の仲間ではありません(リスの仲間)。犬に似た鳴き声をするのでこの名になりました。 ◯ニホンリスとタイワンリス(30p) ⚫︎ニホンリス、タイワンリスともに体は濃褐色なのですが、腹部を見るとニホンリスは純白なのですぐに見分けられます。また、餌を食べている時の尾っぽを見ると、ニホンリスは太い尾を背中に乗せていますが、タイワンリスは尾はだらりと垂らしたままです。 ⚫︎野外(特に市街地)で見かけるのは、間違いなくタイワンリスです。ニホンリスは四国・九州の亜高山地帯に住んでいて滅多に人前に姿を見せることはありません。一方タイワンリスは観光地や住宅に住んでおり、人間の与える餌に寄ってきます。与えられた餌を両手で挟んでモグモグタイム。 ⚫︎「リス」の名は「栗(を食べる)鼠」という「栗鼠(りっそ)」が転嫁したものです。 ←台湾でたくさんタイワンリスを見た。台湾のみかとおもいきや、日本もミャンマーやマレー半島にも生息域を広げて害獣対象にもなっている、とのこと。そういえば韓国でも南部の住宅地で見たことを思い出した。 ◯カブトエビとカブトガニ(54p) ⚫︎両者共にエビやカニの仲間ではなく、古代三葉虫から進化した仲間。カブトエビは3億年、カブトガニは2億年、姿や形を変えずに生きてきたため「生きた化石」と呼ばれる。では、3億年変えていないゴキブリは生きた化石なのでしょうか?残念ながらそうは呼びません。「生きた化石」という呼称は数の少ないものに限られています。 ←岡山県笠岡湾のカブトガニはいっとき絶滅したと言われていた。もしかしたら地球上で、1番生命力が強いのは、人類ではなくゴキブリなのかもしれない。 ◯イカの墨とタコの墨ってどうちがうの?(58p) ⚫︎イカの墨は粘り気があるので、直ぐに固まってしまいます。敵が近づくとイカはポッポッといくつもの墨を吐きます。敵にしてみれば、一匹のイカを追っていたはずなのに、突然目の前に現れた複数の黒い物体(イカ)に面食らい、頭がパニック。手当たり次第に黒い物体に襲いかかっては「ん?これではない」「ん?これでもない」と歯軋りする敵を尻目に、イカはまんまと逃げおおせます。まさに「分身の術」と言ったところです。 ⚫︎一方、タコの墨は粘り気が少なく、さらさらして海中で勢いよく広がります。急にあたりが真っ暗闇になり、敵にとっては突然停電が起きたような状態で、何が何だかわからなく戸惑ってる間にタコはドロンします。 ⚫︎イカ墨のスパゲッティはありますが、タコ墨のスパゲッティはありません。 ⚫︎タコやイカの墨を墨汁代わりに字を書くことはできますが、真っ黒な字を書くことはできません。どうなるかというと、茶褐色になります。タコやイカの墨はメラニン色素であり、メラニン色素はタンパク質なので、時間が経つと腐敗します。そのため長持ちしません。 ⚫︎「いかさま」という言葉がありますが、これはイカで書いた証文が数年経つと消えてしまうことから「イカ墨」が訛ったものです。 ◯フグとハリセンボン(79p) ←フグの雑学には、ミステリで使えそうなネタが山ほどある。 ⚫︎フグ。ふくれるので「ふく」、それがいつしか「フグ」と呼ばれるように。漢字で「河豚」と書くのは、体が豚のように肥大するからとも、釣り上げられたとき、「キー、キー」と豚のような声で鳴くからとも言われています。 ⚫︎フグの毒の成分はテトロドトキシンといい、神経を麻痺させます。毒は主に卵巣や肝臓、皮膚に含まれていますが、この毒は煮ても焼いても分解されません。毒に当たると、早ければ30分、遅いと3時間もしてから症状が現れ始めます。食べた途端に症状が現れるわけではありません。やがて痺れや麻痺、言語障害から呼吸困難に陥り、最悪の場合は死にます。 ⚫︎しかし、フグは生まれながらに毒を持っているわけではありません。稚魚の間は無毒です。フグは海底の土を小さな口で吹き飛ばしながら餌を食べますが、この時海底に住んでいる毒を持つ細菌も一緒に食べてしまいます。その毒がフグの体内に蓄積されるのです。したがって、稚魚の時から人工飼料で養殖されたフグには、毒はありません。 ⚫︎なお、フグ調理師免許は都道府県それぞれの免許であり、全国共通ではありません。そのため免許を取得した都道府県でしか認められないので他県では新たに免許を取り直ししなければなりません。 ⚫︎ハリセンボン。実際のトゲは370本ほどで、名前で言われる半分もありません。毒はありません。 ⚫︎なお、ハリセンボンという名前のカニもいます。ちなみに、指切りの際の常套句「嘘ついたら、ハリセンボン飲ーます」は、この魚やカニを頭から丸呑みさせるという意味ではありません。 ◯みそ汁のアサリの中の小さなカニ(83p) ←こんなに書き写していたら、著作権者から苦情が来そうですが、その時は対処しますので、権利者はお知らせください。もうホントに全部書き写したいほど面白いんです! ⚫︎アサリのみそ汁を食べている際に、時折貝の中に小さなカニが入っていることがあります。カニの子どもと思ってしまいますが、じつはこれは小さな大人のカニで、カクレガニ科に属するピンノというものです。それもメスです。 ⚫︎ピンノのメスは、生まれるとすぐに二枚貝の中に入ります。そのあとは一生そとに出ることはありません。貝の中にいることで、敵には見つからないし、貝が吸い込んだプランクトンを横取りできるので、食べるのにも困りません。自分で働く必要もなく、毎日「食べては寝て」の怠惰な生活を満喫(?)しています。怠惰な生活(寄生生活)のため、色素や体表面の石灰質までもが退化してしまい、体は白く甲羅もやわらかくなっています。 ⚫︎オスはどうしているのかというと、オスの体はメスの1/3ほどの大きさしかなく、開いた貝のわずかなすきまから自由に出入りできます。それでオスは繁殖期になるとその小さな体をフル活用して、手当たり次第に貝を訪問し、引きこもっているメスに出会うと「オー、ベイビー!ずいぶん探したゼェ〜い」と繁殖に励みます。メスは貝の中で卵を産み、卵からかえった幼生は「バイなら」と言い残して(これも既に死語でした)、貝の出水管から外に出ていき、メスはほかの貝に入水管から無断侵入してそのまま居座ってしまいます。 ⚫︎アサリの中に入っているのはオオシロピンノ、ハマグリの中に入っているのはマルピンノです。シジミの中にもシジミピンノがいることがありますが、きわめて珍しいことです。 ◯カモメとウミネコ(110p) ⚫︎カモメの嘴は全面黄色で、ウミネコは先端に赤と黒の模様があります。尾羽はカモメは全面真っ白ですが、ウミネコの尾羽には黒くて太い帯があります。 ⚫︎カモメ(鴎)の若鶏には褐色のマダラがあり、これを「籠の目」の模様に見立て「カモメ」と名付けられたとも、あるいは小さい「カモ」のようであることから、ツバメ、スズメと同じ小鳥をあらわす接尾語「メ」を加えて「カモメ」と名付けられたともいわれています。 ⚫︎ウミネコ(海猫)は「ニャオー、ニャオー」とネコソックリな声で鳴きます。ウミネコは世界中で唯一日本とその周辺地域だけに繁殖している鳥です。 ⚫︎ユリカモメ(百合鴎)は日本には冬鳥として飛来します。ユリカモメは別名「ミヤコドリ(都鳥)」と呼ばれ、東京都の鳥(都鳥)となっています。しかし、ミヤコドリという別種の鳥がいて、混乱してしまいます。つまり、東京都の鳥(都鳥)は「ミヤコドリ」なのですが、ミヤコドリではなく「ミヤコドリと呼ばれている鳥」というややこしさです。 ◯以下、まぎらわしい名前の生きもの ◯カジカ(130p) ⚫︎魚のカジカ(鰍)は、全長12センチほどのハゼに似た魚です。鰍は鱗がないので体表は滑らかです。水の綺麗な砂利ぞこの川にすみ、主にトビケラやカワゲラなどの水中昆虫を食べます。身の閉まった味。北陸地方の伝統的な川魚料理の主役、ゴリがそれです。ちなみに「ゴリ押し」という言葉は、ゴリを取るために川底に網を当てて強引に進む様子から生まれました。カジカというのは、その味が「鹿の肉」のように美味しい=「河の鹿肉」ということに由来します。漢字では「鰍」と書きますが、これは造字で、早春に産卵したあと餌を十分にとって、秋には丸々と太り、秋が旬となることからです。 ⚫︎カエルの方は一般に「カジカガエル(河鹿蛙)」と表記されます。渓流に住んでおり、体長は5センチほどです。体は緑色を帯びた褐色で暗褐色の斑紋があり、石の上では保護色になっています。日中は川岸の石の下などに潜んでいます。5-7月の繁殖期にオスが岩の上などで「ヒュル、ルルルル‥‥」という美しい声で鳴きます。それが鹿の鳴き声に似てる、河に住む鹿ということから「河鹿」と名付けられました。万葉集にはガエルを詠った歌が十数種類あるとのことですが、その全てがカジカガエルのことを詠っています。 ▲遂に字数が5500字ほどになった。キリがないし、一種迷惑なので、この辺りで切る。もし、全部読んだ方はご苦労様でした。 ▲本書はトリビアな情報満載だし、一度読んだらなかなか忘れない書き方なので、初めてのデートや子どもを連れての動物園・水族館などで事前に読んでおけば「パパ!なんでも知ってるんだね!」と目をキラキラさせて尊敬されること必至です。 ▲Kazuさんの紹介。ありがとうございます♪

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