「宮部みゆきの江戸怪談散歩」を選ぶ
「宮部みゆきの江戸怪談散歩」新人物文庫 中経出版
前半はオールカラーで三島屋シリーズ(「泣き童子」まで)の舞台解説と「幻色江戸ごよみ」などの宮部怪談短編の九編の「場所」を、地図と現代写真で「特定」、また「本所深川ふしき草紙」の七不思議の「場所」を「特定」する。一応季節感を考慮して選んでみました(^^;)。
北村薫とのロング・スペシャル対談を経て、宮部の怪談短編(「三島屋シリーズ」の最初と「だるま猫」)と宮部みゆき推薦話2つ(「指輪一つ」岡本綺堂、「怪の再生」福澤徹三)を載せる。
本書は新人物往来社『やっぱり宮部みゆきの怪談が大好き!』(2011)に、大幅修正を加えて再編集したものらしい。宮部みゆき責任編集とあるからには、三島屋の場所とかの「特定」は信頼できると思う。
1番の価値はやはり前半であり、これを手許に東京散歩を是非ともやってみたい。よって電子書籍版(大幅割引の時)で購入。いつでも持ち歩ける。
もう一つの価値は、岡本綺堂「指輪一つ」だろう。江戸時代の半七も出てこない、岡本綺堂のいわば「現代もの」なのではあるが、なんと1912年の関東大震災直後の状況をつぶさに描いている。というか、ふとした瞬間にこれは2011年を描いた小説かと思うくらい、関東から少し離れたところの「庶民」の反応が似通っている。もちろん、少し怪談めいたこともあるのだけど、こういうこともあったんじゃないか、岡本綺堂は誰からかこの話聴いたんじゃないか、ホントにあったんだとしたら怖いけど良かったねとさえ思うのである。